2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730598
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Research Institution | Neuropsychiatric Research Institute |
Principal Investigator |
阿部 高志 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (00549644)
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Keywords | 睡眠 / 部分断眠 / 認知機能 / 眠気 / 覚醒水準 / 眼球指標 |
Research Abstract |
睡眠不足や睡眠の質の低下によって交通事故リスクが増大する。これは,眠気や認知機能低下が原因と考えられている。すでに全断眠が覚醒水準や認知機能の低下を引き起こすことは過去の研究から明らかにされているが,日常生活場面で頻繁に遭遇する部分断眠の影響に関する情報は充分得られていない。そこで、本年度は睡眠時間を4時間に制限する部分断眠実験を実施することで、睡眠時間の短縮が眠気や持続的注意に及ぼす影響を検討した。若年健常者9名(平均23.4歳、19-30歳)を対象として、部分断眠前後にVisual Analog Scaleとカロリンスカ眠気尺度を用いて主観的眠気を、行動的覚醒維持検査(OSLER検査)を用いて他覚的眠気(入眠潜時)及び持続的注意(無反応率)を評価した。OSLER検査は、各回40分間、3秒ごとに出現する光刺激に対して反応を求める課題である。本研究の結果、部分断眠前と比較して部分断眠後では、主観的眠気が亢進するとともに、入眠潜時の短縮と無反応率の増加を認めた。この結果から、一晩の部分断眠は主観的・他覚的眠気を亢進させるとともに持続的注意の悪化を引き起こすことが明らかとなった。続いて、部分断眠によって引き起こされる眠気や不注意による事故の予防法を検討するために、上述のデータを用いて、OSLER検査実施中の無反応に伴う眼球指標の特徴を検討した。無反応の連続回数に従ってOSLER検査の時系列データを1分ごとに分類したところ、区間内に出現する無反応の連続回数が増加するごとに、瞬目頻度の減少、PERCLOS(1分あたりの閉眼時間の割合)と緩徐眼球運動出現率の増加、瞳孔径の縮小を認めた。これらの指標が無反応の有無を弁別する精度を比較したところ、PERCLOSEの弁別能が最も優れていた。さらに、PERCLOSが11.5%未満の区間では、無反応はほとんど発生しなかった(0.2回/20回/分)。本研究の結果は、運転時のPERCLOSの値を低く保つことで眠気や不注意による事故を予防できる可能性を示唆している。
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