2011 Fiscal Year Annual Research Report
ルソー教育思想の思想史的再検討-「霊操」の視座から-
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22730600
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
室井 麗子 岩手大学, 教育学部, 准教授 (40552857)
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Keywords | 教育思想 / ルソー / ペトラルカ / 霊操 |
Research Abstract |
本年度は、ルソーの教育思想を、「霊操」を分析枠組みとし、ペトラルカの自己実践・自己形成論を参照枠として、「ヒューマニズム」の思想史的文脈の中で再検討するという研究を本格的に始動させた。 まず、昨年度に収集したペトラルカに関わる研究文献、さらに、ルソーにおけるペトラルカの影響に関わる研究文献を解読した。この作業によって、特に18世紀フランスにおけるペトラルカの受容状況を明らかにした。具体的には、(1)14世紀以降『カンツォニエーレ』の作者として称賛を謳歌していた詩人ペトラルカは、17世紀後半のフランスにおいてはイタリアの凋落と共に嘲笑の的になったこと、(2)その後18世紀に入るとヴォルテールの批判的受容を経て、ルソーが詩人ペトラルカ復活に大いに寄与したこと、などが明らかになった。同時に、(3)上記の先行研究においては「ヒューマニストとしてのペトラルカ」のルソーへの影響については俎上に載せられてこなかったことがわかった。 そこで次に、(4)ヒューマニズムの文脈にルソーを位置づけるべく、「ヒューマニストとしてのペトラルカ」のルソーへの影響について検討を試みた。具体的には、「霊操」の自己実践の枠組みのもと、ペトラルカの『孤独生活論』というテキストを参照枠として、ルソーの教育論を再読した。その結果、「自己へ深まるとともに世界へと深まり、世界における自己の位置取りを分析した上で世界における自己のあるべき生き方を自覚する」という自己と世界との関係性の図式が両者において共有されていることが判明した。 さらに、以上の研究をより発展させるために、(5)ペトラルカの著作のさらなる解読に着手した。具体的には、ペトラルカの自己実践・自己形成論をより深く検討するために『宗教的閑暇』の解読を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究計画どおりに文献を収集し、解読・検討し、研究成果を公表することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本研究課題の最終年度となる。本研究課題を成果としてまとめるべく、研究計画に沿って着実に作業を進めていきたい。
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