2011 Fiscal Year Annual Research Report
幼児の遊び場面における自発的な歌唱行為の社会的機能に関する研究
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22730610
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
石川 眞佐江 静岡大学, 教育学部, 講師 (80436691)
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Keywords | 幼児の音楽行動 / 歌唱 / 遊び / 見立て / コミュニケーション |
Research Abstract |
平成23年度は主として以下の4点について研究を進めた。 (1)幼児の遊びに関する国内外の先行研究の収集と批判的検討 文献検索および山田(1996)の『遊び研究文献目録』により、主としてごっこ遊びに関する先行研究を収集、分類した。その結果、ごっこ遊び研究の潮流として、1.遊びの構造、成立に関する研究、2.ごっこ遊びにおけるイメージの役割、共有過程に関する研究が多くなされていることが明らかになった。 (2)これまでに蓄積した幼児の歌唱行動事例データの整理・分類 2002年~2005年にかけて幼稚園・保育所において行った観察調査により得られた事例データを、第一段階として共同遊びと一人遊びにおける事例に分けた。その上で、歌唱行動が遊びの展開に及ぼした影響という観点からカテゴリー化を行った。その中から歌唱行動の機能として、共同遊びにおいては1.変換の伝達と共有、2.「そらし行為」としての歌、3.競争遊びにおける歌、という3つの側面を導き出した。また、一人遊び場面においては、1.対象への理解を深める歌、2.心情の代弁としての歌、という2つの側面が浮かび上がった。さらに、各事例を分析する中で、発達段階による歌の歌われ方の違いについても検討の対象とした。 (3)新たなフィールドにおける観察調査による幼児の歌唱行動事例データの収集 静岡市内の幼稚園および東京都内の保育所において、2011年9月および11月~12月、2月に観察調査を実施した。非参加観察法による観察を行い、ビデオ記録とフィールドメモによる記録を行った。得られた事例データは上記(2)と同様に整理・分類に着手した。 (4)関連学会等への参加・成果発表 芸術教育分野における研究者が集まる日本保育学会、音楽教育史学会、音楽教育学会に参加し,関連分野の研究者との意見・情報交換,音楽教育学会においては成果の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蓄積していた事例の分析により、幼児の歌唱行為がもつ機能について、いくつかの特徴的な側面が浮かび上がってきた。また、新たなフィールドにおける事例収集により、より多くのデータを得ることができた。遊び研究における幼児の行動の研究成果と、本研究により明らかになっている遊び場面において歌唱行為が果たす機能を重ね合わせることで、幼児期に特有のコミュニケーション行動の一端が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、幼児の歌唱行動事例の収集および分析を継続する。特徴的と思われる機能について分類をすすめ、論文を執筆、発表する。また、継続して観察調査及び事例収集を行う。成果は国内外の学会にて発表し、関連分野研究者との意見交換、情報収集を行う。
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