2010 Fiscal Year Annual Research Report
植民地朝鮮における実業教育関連の社会教育に関する研究
Project/Area Number |
22730611
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
李 正連 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (60447810)
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Keywords | 実業補習教育 / 実業補習学校 / 植民地朝鮮 / 卒業生指導 / 社会教育 |
Research Abstract |
植民地朝鮮の教育政策において、実業教育は初等教育と並んで重要視されてきた部門であったにもかかわらず、植民地時代の実業教育に関する研究はきわめて少ない。特に、社会教育と実業教育との関係についてはほとんど注目されてこなかった。本研究は、植民地朝鮮における実業教育関連の社会教育施策及び朝鮮民衆による実業教育関連の教育実践やその言説に関する考察を通して、植民地朝鮮における実業教育と社会教育との関係性を明らかにするものである。 平成22年度は、植民地朝鮮における実業教育政策を概観し、教育政策における実業教育の位置付けの変化及びその背景要因を社会教育政策との関わりの中で考察するため、当時の実業補習教育、とりわけ実業補習学校に注目した。日本「内地」では高い普及率を見せていた実業補習学校は、植民地朝鮮ではあまり普及しなかったが、1935年、「内地」で実業補習学校が廃止されたことに対し、朝鮮及び台湾では存置されるなど、「内地」とは若干異なる歩みを見せていた。それは、すでに義務教育が実施されていた「内地」とは違い、朝鮮は最低限の教育-普通教育と実業教育-のみで「従順なる被植民者」になることが求められる植民地であったということと無縁無関係ではない。朝鮮の場合、植民統治10年目になる1919年に大規模の独立運動が勃発し、その後、朝鮮民衆は高い教育熱を見せ続けていったが、それに対し、朝鮮総督府は「普通教育と実業教育」という植民地における教育方針を堅持しながらも、反日運動の再発防止のため、朝鮮民衆の高い教育要求にも留意する必要があった。つまり、朝鮮総督府は植民地朝鮮において中等程度以上の教育は拡大しないという方針を立てると同時に、中等教育の機会を強く求める朝鮮民衆の声も無視できないという「植民者」としての矛盾を抱えていたのである。その矛盾を乗り越える方法として、実業補習学校は最適の手段ではなかったかと思われる。
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Research Products
(1 results)