2011 Fiscal Year Annual Research Report
植民地朝鮮における実業教育関連の社会教育に関する研究
Project/Area Number |
22730611
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 正連 東京大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (60447810)
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Keywords | 実業教育 / 朝鮮民衆 / 植民地朝鮮 / 卒業生指導 / 実業補修学校 / 夜学 / 社会教育 |
Research Abstract |
本研究は、植民地朝鮮における実業教育関連の社会教育施策及び朝鮮民衆による実業教育関連の教育実践やその言説に関する考察を通して、植民地朝鮮における実業教育と社会教育との関係性を明らかにするものである。 平成23年度は、前年度の実業教育政策に関する研究を踏まえつつ、実業教育をめぐる朝鮮総督府及び朝鮮民衆の認識や対応の変化を考察することによって、それぞれの特徴と目的について明らかにした。朝鮮民衆の認識に関する資料は主として植民地期の代表的な民族系の新聞及び雑誌を中心に考察を行った。 植民地期朝鮮における実業教育は、朝鮮総督府のみならず、朝鮮知識人や朝鮮民衆それぞれによって独自に、または相互の対応に対する反動として行われていたといえる。まず、朝鮮総督府は「実業補習学校」や「卒業生指導施設」等の実業教育政策を通して、中等学校への入学競争や就職難を緩和させつつ、青年を農村に残存させ、本来の植民地経営方針を維持していこうとした。一方、朝鮮の知識人たちは、三・一運動後の実力養成運動を行う上で、実業教育の必要性をよりいっそう感じるようになり、一般民衆に対して実業教育の奨励を積極的に行っていた。最後に、一般民衆はおおむね立身出世志向が強く、それ故、教育に対する欲求はなかなか下がらず、多くの若者が進学や就職先を求めて都市へ移動するようになるが、いつも厳しい入学競争や就職難に置かれていた朝鮮民衆は自ら実業教育関連の学校や夜学の設立を通して自分たちの生きる道を開拓すると同時に、朝鮮総督府の打ち出す教育政策にある程度便乗しながらも、自分たちの目標や都合に反することや不公平なこと等が起った場合は、強く抵抗し、あるいは要求もしていた。 つまり、朝鮮民衆は朝鮮総督府の実業教育政策に対して必ずしも「抵抗」または「協力」のいずれかに偏るのではなく、自分たちの様々な欲求や家庭状況及び地域条件、経済的あるいは社会的変動等を考慮しながら、時には政策を利用し、時には自ら独自の教育活動を展開することによって、各自の生活を営んでいたといえよう。
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