2013 Fiscal Year Annual Research Report
討議の実現に関する教育学的研究-「生活世界の合理化」方略と討議主体形成を中心に-
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22730620
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
丸橋 静香 島根大学, 教育学部, 准教授 (10325037)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ハーバーマス / オースティン / 同一性 / 差異 / ヴルフ |
Research Abstract |
ハーバーマスのコミュニケーション論は平等な対話関係を強調する。そして、それに基づく教育論も、例えば共同的な学びの提案というかたちでそれを強調する。しかし、現実の場、特に未熟な子どもを対象にする教育場面ではそれを想定することは難しい。 本研究では、ハーバーマスのコミュニケーション的行為の理論に基づく共同的学びを可能にするには、いかなる教師側の仕掛け・指導方法が必要なのかということを考察した。考察の手順としては、ハーバーマスのヴィトゲンシュタイン受容、オースティン受容を検討した。そこからは、コミュニケーション的行為にとっては、それが展開する場の語用法・力・社会関係が重要であり、こうした権力関係の布置を同一に共通して承認しておくことが必要であることが引き出された(同一性の形成)。しかしその一方でコミュニケーション的行為のメタ形式としての討議は、コミュニケーションの布置の同一性に回収されていては成立可能でない。そこで、討議的な対話がなされるには、共通の布置から逸脱すること(差異への志向性)が必要であることが明らかになった。そこで、教育/人間形成と関連させてここにアプローチしている、ドイツの教育人間学の研究者Ch.ヴルフのミメーシスを中心とした構想を手がかりにし結論を得た。 教師が留意すべきことは次のとおり。同一性形成に関しては、通常の学校・学級生活営みつつも、そこに過剰な権力関係がないかを常時チェックすること。差異への逸脱に関しては、教師が他者として子どもの知識・規範の外側を指し示すここ、そのさい言語化の同一性の暴力にもセンシティヴであること、である。 なお、2013年9月、ドイツ、ベルリン自由大学へヴルフ氏を訪問し、研究上のアドバイスを頂いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述した研究成果は、平成25年10月の第56回教育哲学会において発表した(「コミュニケーション的行為能力を育成する方法について―ハーバーマスをヴルフによって補完・展開する試み―」)。しかし、まだ論文化に至っていない。この点で「遅れている」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ハーバーマスの構想を、理念的(過ぎる)ものと捉え、それを身体等によって補完する必要性を論じたが、身体を強調することで生じる実践の正当化の問題をどう考えるのかも考えねばならない。どちらか一方から実践への示唆を得るのも研究の一つの方法だが、それ以上にハーバーマス的なもの(言語・理念)とヴルフ的なもの(身体)との対照から、教育学、教育方法へ言いうるものがあるのではないかと考えている。
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Research Products
(1 results)