2011 Fiscal Year Annual Research Report
ケアリング教育からシティズンシップ教育への展開の可能性
Project/Area Number |
22730639
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
伊藤 博美 名古屋経済大学, 人間生活科学部, 准教授 (50410832)
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Keywords | 教育 / ケア / 正義 / シティズンシップ / 批判的思考 / フェミニズム |
Research Abstract |
【平成23年度の研究実施計画と実績】 ケアリングとその教育のカリキュラムの構造の検討 本研究の目的は、第一に、ケアリングを教師-学習者のモデルとするだけでなく、ケアリングのスキル育成のカリキュラムの哲学的根拠を提示することである。計画ではケアリング教育のカリキュラムの同心円構造について、その矛盾を検討する予定であり、検討対象となる文献はThe Challenge to Care in SchoolsおよびCaringであった。しかしCritical Lessonsにおける、カリキュラムに含まれるトピックの具体的な列挙、また批判的思考の定義やケアリングとの関係の記述から、これを加えた。結果、批判的思考の対象とは私たちが配慮(care about)しなければならないものであり、批判的思考とは、感情を脇に置かず、例えば被害者-加害者の両者の記述に触れ、一方に偏らず感情を考慮するものと定義づけられた。またThe Challenge-とCritical Lessonsのカリキュラムにおいては、後者がより営みや社会的問題に重点化したものであることが明らかとなった。 シティズンシップ教育の研究成果の整理・検討 第二の目的はケアリング教育から展開したシティズンシップ教育におけるカリキュラムの明示であったが、当該年度においてはこれに取り組むことができなかった。しかし、シティズンシップとケアリングの関係を検討する哲学的基盤として「教育における正義とケア」というテーマで教育哲学会大会の研究討議において発表した。そこでは、ケアおよびケアリング倫理が公-学校/私-家庭という二分法的捉え方だけでなく、学校教育の目標とするモデルやそれに到達させるためのカリキュラムや、教師-子ども関係の変革を迫るものであることを明らかにした。さらに、近年のフェミニズム研究がそれを理論的に後押しするものであることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シティズンシップ教育の概要を捉える作業に加え、ケアをめぐるフェミニズム研究の成果が近年続々と現れていることにより、それらを整理する作業が加わったことによる。また、研究対象の中心となるノディングズも近年続々と著作を刊行しており、それらの文献を読解する作業に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
例年、教育哲学や教育思想を領域とする学会は9~10月に開催され、それらの学会での発表を予定していたが、6月下旬に開催される中部教育学会の大会にて個人研究発表を行う。時期を拡散させることで十分な検討の上、発表の内容に盛り込むことが可能と考える。また、遅れているシティズンシップ教育の検討については、特にノディングズが検討してきたシティズンシップ概念やその教育に的を絞った上で、ケアリング教育からシティズンシップ教育への展開の可能性を検討したい。
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