Research Abstract |
本年度は,(1)小学校体育授業を対象に,学習成果(態度得点)の高い教師とそうでない教師とで体育授業に対する「反省的思考(反省得点)」が教職経験年数の向上に伴ってそれぞれどのように異なってくるのか検討し,教師の成長を阻害する要因について検討する,(2)上記(1)の結果から,体育科における「教師の成長過程モデル」開発に向けて検討する,の計2点を行った。すなわち,小学校教師261名を対象に,筆者らが作成した8尺度20項目からなる体育授業に対する「反省尺度」および総括評価として有効性の認められている「態度尺度」の2つを用いた調査を実施した。その結果,(i)4年目までの所謂,初任教師は体育授業に対する振り返りが他の教師群に比して自らの体育授業を反省する能力が乏しいことが考えられたこと,(ii)ほとんどすべての反省尺度において,経験年数の増加に伴って,態度得点の高い教師は反省得点も漸増したのに対して,その得点の低い教師は逆に逓減する関係が認められたこと,(iii)上記(ii)より,とりわけ経験年数12年目以降の態度得点の低い教師は,体育授業における「技術的実践」をほとんど発揮してないことを自覚されていたことが認められた,(iv)体育授業における教師の実践的指導力の中で阻害されているものを検討した結果,男性教師,女性教師に関係なく,取り扱う運動教材に対する「教材研究」が大きく阻害されている可能性の高いことが認められた。今後,教師の運動教材に対する「教材研究」を阻害する要因について検討する必要がある。 これらの結果は,教師のキャリア発達を担保していくための貴重な手がかりとなる点で重要な結果であった。合わせて,態度得点の高い教師と低い教師にみる反省得点と教職経験年数の関係より,体育科における初任者研修,5年目研修,10年目研修の重要性およびその具体的な内容について提示することが可能になった点で意義があった。
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