2011 Fiscal Year Annual Research Report
100年間の児童の表現分析と作品資料のデジタルアーカイブ化に関する研究
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22730706
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
蜂谷 昌之 広島大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (60510542)
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Keywords | 美術教育 / アーカイブ化 / データベース / 表現分析 / 卒業制作 / 教育史 / 児童作品 |
Research Abstract |
平成23年度は、博労小学校所蔵児童作品に関する文献調査及び児童表現の分析を行なうとともに、作品資料のデジタルアーカイブ化のための撮影を継続した。同校の作品は、明治時代より卒業制作として図画、習字、作文が残されてきたものであるが、これらの表現作品群にみられる教育思想及び実践の変遷を読み解くため、関連する文献や先行研究を手掛かりに表現内容の分析を進めた。児童作品は明治期より時代毎に撮影しているが、それぞれの作品群の整理は十分なされておらず、撮影を進めながら名簿等を参考に制作年の特定を行なっている状況である。教育的側面だけでなく、児童生活や郷土の伝統文化、風俗、社会事情等、一世紀以上にわたり記録された博労作品は歴史的資料価値を有するものであり、作品の精査及び分類は、表現分析、あるいはデータベース構築の過程において極めて重要な作業であるため、次年度以降も慎重に進めていきたい。 博労小学校の卒業作品には、太平洋戦争期及びその前後数年にわたり作品が欠落しており、その経緯について文献等を参考に検討してきたが、今年度は関係者への聞き取り調査等を通してこの間の同校における表現教育の取り組みに関する詳細な調査を実施した。特に、昭和10年代から昭和20年代前半に在籍した同校卒業生及び元教師に対する聞き取り調査をはじめ、昭和40年代に博労作品に関する調査を行った元教師への聞き取り調査をまとめ、当時の同校における表現教育や卒業生作品の欠落が生じた背景、表現作品保存の取り組みの実態について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに児童作品の表現分析については、当初予定していた通り、基礎的資料の収集及び分析を進めており、作品を生み出す背景について、教育思想や方法、地域情勢などの把握及び整理を行っている。特に、戦時体制下の欠落については、資料の空白を埋めるべく本年度までに聞き取り調査を実施し、太平洋戦争期における表現教育の実態を明らかにしてきている。また、作品資料のデジタルアーカイブ化においては、児童作品の記録撮影を進めながら、一部作品の年代不明分の確認作業を行い、慎重に資料を整理しているところである。平成24年度以降もこの作業は継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成23年度から着手しはじめた作文(綴方)及び習字(書方)作品にあらわれる表現の分析を引き続き行い、児童表現の歴史的変遷について検討していきたい。また、デジタル化した資料をもとにデータベースの整備に着手したい。先行事例などを参考に適切なシステムの構築をはかり、作品資料の検索項目の策定等、作品のデジタルアーカイブ化に向けた作業を本格化したい。
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