2012 Fiscal Year Annual Research Report
100年間の児童の表現分析と作品資料のデジタルアーカイブ化に関する研究
Project/Area Number |
22730706
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
蜂谷 昌之 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60510542)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 美術教育 / アーカイブ化 / データベース / 表現分析 / 卒業制作 / 教育史 / 児童作品 |
Research Abstract |
平成24年度の研究概要であるが、博労小学校所蔵児童作品の表現分析を行いながら、作品資料のデジタル撮影及び画像処理を進めた。 博労作品にみられる児童表現の変容に関する調査では、これまで、明治期から平成期までの作品について先行研究等を手掛かりに確認するとともに、博労作品の欠落期にあたる昭和戦時下の教育状況や欠落に至る経緯について調査を通じ明らかにしてきたところであるが、平成24年度の調査では、明治期から続く図画の教育内容であった臨画教育の転換点である大正期の自由画教育に着目し、表現作品の分析を行った。画家山本鼎の提唱した自由画教育の影響として、同校の作品資料では大正9年度以降の作品に表現上の変化を認めることができたほか、自由画教育時代においても臨画が許容されていたことを確認した。大正時代における自由画の隆盛には、当時、全国的に開催されていた児童自由画展や新聞報道による影響も指摘されるため、この地域における実態調査を行い、昭和期へと続く表現の変容について調査を進めたい。 作品資料のデジタルアーカイブ化では、表現作品の撮影を行うとともに、作品データの画像処理を進めた。博労作品のデジタル化に関しては、同校所蔵作品のうち、デジタル化の急がれる明治期から昭和戦前期までの図画、綴方、書方作品を先行して順次データベース化し、おって戦後から平成期までの作品資料を加えていく予定である。また、制作年ごとに保管される同校の膨大な作品資料には、制作年が特定されていないものがあるため、現在、その特定作業等資料整理を並行して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童作品の表現分析に関しては、文献や学校関係資料をもとに調査を進めてきている。これまで、明治期から平成期までの作品概要について先行研究を手掛かりに確認するとともに、博労作品の欠落する太平洋戦争時の教育状況や欠落に至る経緯について調査を通じ明らかにしてきた。また、明治期から続く臨画教育の転換点であった大正期の自由画教育について、博労校の実践や作品に見られる表現を分析しながら検討を行ってきている。作品資料のデジタルアーカイブ化では、博労小学校に保管される児童作品群の制作年の特定、整理作業をはじめ、明治期からの図画、書方、綴方作品のデジタル撮影、作品の画像データの処理に着手し、データベースの構築を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
表現分析に関する調査では、大正期の博労校の表現教育実践について、当時の児童自由画展に関する新聞報道の調査をはじめとする社会情勢の調査や、児童作品から読み取れる教育方法等の検証を進めていきたい。作品資料のデジタルアーカイブ化では、デジタル化の急がれる明治期から昭和戦前期までの作品についてデータベースを構築していく。データベース機能の充実を図るよう、検索項目を検討し、効果的な運用を目指したい。なお、データベース構築については、博労小学校内にある「ばくろう思い出館」に設置予定であるため、同校関係者と仕様等について検討していく予定である。
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