2011 Fiscal Year Annual Research Report
超重症児における感覚受容評価と微細な行動表出との関連に基づいた教育支援方略の検討
Project/Area Number |
22730718
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
菊池 紀彦 三重大学, 教育学部, 准教授 (20442676)
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Keywords | 特別支援教育 / 重度重複障害 / 近赤外光トポグラフィー |
Research Abstract |
本研究は、刺激や働きかけに対する反応が乏しい超重症児を対象に、1)多感覚刺激呈示が覚醒水準の向上・維持に有効であるかどうかを脳血流動態から検討すること、2)教育実践中における脳血流動態と心拍数変動が超重症児の微細な行動表出とどのように関連しているのかを明らかにすること、3)教育支援の方略を検討すること、を目的とし、2年間の研究を行った。 その結果、1)脳血流動態(2chNIRSおよびETG-4000による測定)からみた嗅覚刺激の受容状態については、刺激呈示に対してOxyHbの値が上昇する者もいれば、下降を示す者もおり、必ずしも一致した結果を得ることができなかった。一方で、すべての対象者において、刺激呈示中におけるHR水準の上昇ならびにHRV水準の変動が有意であった。これらは、刺激に対する覚醒水準の向上を示唆するものである一方、超重症児の感覚刺激受容の場所がその脳障害により個々により異なる可能性があることを示唆している。 2)教育実践中における脳血流動態および心拍数変動は1)の結果と同様であった。そのなかでもHRV変動値をみてみると1~3%台であり、健常乳幼児のHRV変動値(3~5%台)と比較しても低かった。この低さは重篤な脳障害や人工呼吸器装着による影響もあると考えられるが、教育実践前後におけるHRV変動には有意差が認められることから、実践による賦活効果の反映と考えられる。 3)8名を対象に2回ずつ実施したかかわり手とのコミュニケーションの特徴について、行動コーディングシステムからの分析を試みた。その結果、かかわり手のコミュニケーションの特徴は3つのタイプ((1)かかわり手主導のコミュニケーション、(2)対象児の行動表出に応じたコミュニケーション、(3)対象児の新たな行動表出を促すコミュニケーション)に分類された。これらから、対象児の行動に着目するとともに、かかわり手の行動を同時に評価することが教育実践の方略を検討する上で有効であることが示唆された。
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