2011 Fiscal Year Annual Research Report
高専における発達障害のある学生の孤独感と所属集団の被受容感および自己効力感の変容
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22730723
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Research Institution | Tokyo National College of Technology |
Principal Investigator |
黒田 一寿 東京工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (60331998)
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Keywords | 発達障害 / 青年期 / 孤独 / 被受容感 / 自己効力感 |
Research Abstract |
本研究では,青年期における発達障害のある学生が抱える孤独感に焦点をあて,その背景にある要因を探る。また,当事者(発達障害のある学生またはその傾向が強い学生)の特性だけではなく,彼らの所属する集団特性にも注目し,共生の視点を学生支援と教育の実践に活かすことを目的としている。 集団特性を定量的に捉える尺度としてQU(Questionnaire-Utilities)を用い,平成23年度は,高等専門学校の新入生を対象として4月後半,6月,12月と3回実施した。加えて,面談等を通じた記録から質的データを収集し,QUの結果と付き合わせて解釈を行った。非承認得点が高い集団では「孤立」や「疎外感」を感じるケースが多く,さらに被侵害得点が高くなれば「いじめ」等が懸念される。調査対象となった高専では,非承認・非侵害得点の低い満足群は入学直後からほぼ4割で推移し,非侵害得点が高い学生の割合が3割強から4割強へと増加した。入学直後には緊張感から固さが見られた学級集団で,徐々にゆるみがみられるようになった。その中で,発達障害の傾向がある学生の中には,極端に高い満足群から極端な要支援群に移行するケースが見られ,クラスの人間関係がなれ合っていく中で逆に孤独感を強めるケースがあることがわかった。 強い被侵害感と非承認感をもった発達障害のある学生のケースでは,途中で所属するクラス集団が変わったことにより人間関係も変化し,被侵害得点は回復したが,非承認感は依然として低いままであった。こうした学生の語りからは,集団が受容的であるだけでは孤独感は拭い得ず,コミュニケーションにおける成功体験が重要となってくることがわかった。来年度はこうした観点からも支援の実践研究を発展させ,観察・面談を通じて質的データを蓄積させたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
音声データのテープ起こしや取材資料のデータ化などの作業を計画していたが,東日本大震災後の電力不足の影響で,データ整理補助に雇用する予定であった研究補助スタッフによる作業を断念(人材確保・作業環境確保の両面から)せざるを得なかった。また他高専への調査についても,時期を23年度後半に変更せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
より多くのデータから一般化をめざす量的研究方法から,絞った事例を詳細に検討していく質的研究方法に加重を移し,研究目的の達成を目指すこととする。また,23年度に得られたデータから,新たな仮説生成の可能性を感じており,研究計画時点で設定した仮説を検証すると言うよりも,質的データに基づいた新たな仮説生成と,そこから得られる知見を実際の支援に活かすことを目標としたい。
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