2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740014
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲場 道明 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (80359934)
|
Keywords | モジュライ / ベクトル束 / 接続 |
Research Abstract |
今年度はまず、非特異射影曲線上で不分岐な特異点を持つ放物接続のモジュライ空間を構成し、その非特異性、シンプレクティック構造の存在、一般リーマン・ヒルベルト対応、一般モノドロミー保存変形に関する齋藤政彦氏との共著論文を完成させ、現在投稿中である。また、非特異射影代数曲線上で正則特異点を持つ放物接続で、特定のスペクトルタイプを与えるのもののモジュライ空間を構成し、その非特異性、次元の計算、シンプレクティック構造の存在、モノドロミー保存変形の幾何学的パンルベ性を示した論文をほぼ完成させ、現在投稿のために準備中である。この論文ではさらにリーマン・ヒルベルト対応についても考察していて、スペクトルタイプを固定したものに対応する基本群の表現のモジュライで対応する物も構成しているが、リーマン・ヒルベルト対応が固有射になることは証明できたが、フルフラグの場合のように双有理型な射になっているかどうかは今の所わからない。それ以前に、リーマン・ヒルベルト対応が全射になっているかどうかすら難しくてわからない状態である。それにも関わらず、モノドロミー保存変形の幾何学的パンルベ性を証明することに成功したのは驚くべきことであったと思う。なぜ幾何学的パンルベ性の証明に成功したかというと、スペクトルタイプを固定した放物接続のモジュライ空間に対して、その上の射影的かつ滑らかな別のモジュライ空間で、フルフラグの放物接続のモジュライ空間への閉埋め込みを持つものを構成し、フルフラグの放物接続のモジュライ空間上で定義されているモノドロミー保存変形の幾何学的パンルベ性に帰着できたからである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、不分岐な特異点を持つ放物接続のモジュライ空間をかなり一般な形で代数幾何学的に構成し、その非特異性、シンプレクティック構造の存在などを示したことはこの分野において重要なことである。また、スペクトルタイプを固定した放物接続のモジュライ空間を構成し、特にその上で定義されるモノドロミー保存変形の幾何学的パンルベ性を示したことは興味深い結果であると思う。以上より、研究はおおむね順調に進展していると言えると思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は何と言っても、分岐特異点を持つ放物接続のモジュライ空間の構成に成功したいと思っている。分岐特異点を持つ接続のモジュライに関しては既に何人かの研究者による先行結果があるが、どれも幾何学的パンルベ性は満たしてはいないようで、モジュライ空間に特異点もあり、不十分な結果であると思われる。今後私は、分岐特異点を持つ放物接続のモジュライ空間を適切に定義し、その非特異性、シンプレクティック構造の存在を示したいと考えている。
|