2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲場 道明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80359934)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 代数幾何学 / モジュライ / 導来圏 / 接続 |
Research Abstract |
平成24年度は神戸大学の齋藤政彦氏との共同研究による非特異射影代数曲線上で非正則特異点を持つ安定放物接続のモジュライ空間の構成と一般リーマン・ヒルベルト対応の解析、ストークスデーター保存変形についての論文を完成させて京都ジャーナルにおいて出版予定となった。また、非特異射影代数曲線上で正則特異点を持ち、特定のスペクトル型を持つ安定放物接続のモジュライ空間の構成を行い、自然に定義されるモノドロミー保存変形が幾何学的パンルべ性を持つことを証明した。この結果は平成24年の11月に数理解析研究所における国際研究集会にて研究発表をした。このスペクトル型を固定した接続のモジュライは可積分系の理論において多様な例を与え、東京大学の大島氏、坂井氏などによって興味深い研究がなされているが、安定放物接続のモジュライ空間が正しいモジュライ空間であり、実際に幾何学的パンルべ性を持つことを示した意義が大きいと思われる。 一方で、三角圏上における安定性とモジュライという題名で日本数学会から「数学」という雑誌への論説の執筆を依頼されていて、無事に掲載された。この論説においては、代数幾何学における導来圏の研究意義、これまでの興味深い研究結果などについて説明を与えた。近年注目を集めている数理物理学と三角圏との関連性がこの分野の研究が注目されている大きな理由であると思われるが、数理物理学の深い内容には触れず、代数幾何学的観点からの近年の興味深い研究結果について述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代数曲線上で非正則特異点を持つ接続のモジュライとストークスデーター保存変形についての研究を行うことが大きな研究目的であったが、一応不分岐な特異点の場合にほぼ完全にモジュライ空間の構成ができて、十分一般の場合にストークスデーター保存変形の幾何学的パンルべ性が示されたので、概ね目的は達成されていると思われる。一方で、特定のスペクトル型を持つ正則な安定放物接続のモジュライ空間の構成と幾何学的パンルべ性に関する結果はついでにできてしまった結果ではあるが、よくまとまった良い結果であると思う。そして可積分系への応用や他の研究者への啓蒙という観点からもなかなかの結果であると思われる。一方、三角圏とモジュライに関する論説は、渋々受諾した執筆であったが、良い仕事になったと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに不分岐な特異点を持つ放物接続のモジュライについての結果はほぼ完成しているので、今後は非特異射影代数曲線上で分岐特異点を持つ接続のモジュライ空間の構成と一般モノドロミー保存変形についての研究をしたいと考えている。分岐特異点を持つ接続のモジュライについては既に数人の研究者による先行結果はあるが、幾何学的パンルべ性などのモノドロミー保存変形の初期値空間として満たすべき性質が成り立っておらず、正しいモジュライ空間とは言い難い。そこで、私は代数幾何学的観点からモジュライの正しい定義を発見し、モジュライ空間の構成と幾何学的パンルべ性を証明したいと考えている。
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