2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22740021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市野 篤史 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40347480)
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Keywords | 周期 / 形式次数 / テータ対応 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、Wee Teck Gan氏(UCSD)と共同で、形式次数予想とテータ対応の研究を行い、論文の執筆を行った。形式次数予想とは、平賀郁氏(京都大)、池田保氏(京都大)との共同研究において定式化された、局所体上の簡約代数群の離散系列表現の形式次数を、随伴ガンマ因子の特殊値で表す予想である。本共同研究ではテータ対応における形式次数の挙動を調べ、これが形式次数予想から予期されるものと一致することを証明した。前年度において既に証明は与えていたが、論文の執筆のために理論や証明の整備、簡略化を行う必要があった。特に、証明中に現れるイプシロン因子の符号に関して、詳細な調査を行った。このイプシロン因子はPiatetski-ShapiroとRallisの積分表示を用いて、Lapid-Rallisによって定義されたものであるが、この定義が偶数次ユニタリ群の場合に誤っていることが判明した。イプシロン因子の符号は、数論的に非常に重要な意味を持つため、検証には細心の注意を払う必要があった。検証には、直交Galois表現に対するDeligneの結果と形式次数の正値性、Harris-Kudla-Sweetによるユニタリ群に対するテータニ分律、低次元の場合に対する直接計算、の独立した3通りの手法を用いた。論文の執筆は終了し、現在雑誌に投稿中である。 KartikPrasanna氏(Michigan大)と共同で、四元数体上の保型形式のPetersson内積を、周期不変量の積へ分解に関するPrasanna氏の予想(志村予想の一般化)について研究した。以前からこの予想に関して討論を重ねていたが、今年度に入り、四元数体上のテータ対応とp進保型形式を用いて予想を証明する戦略がたった。一方、理論が技術的に複雑であり、計算量が膨大となるが、これを避けることは期待できないことも判明した。必要とされる計算を逐次行い、四元数体上のテータ対応のシーソー等式を定式化し、証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
形式次数予想とテータ対応に関する、Gan氏との共同研究は、論文の執筆を終え、ほぼ完了した。これにより、研究目的であったp進簡約群の調和解析の数論的理解は、また一歩進んだことになる。四元数体上の保型形式に関する、Prasanna氏との共同研究は、前年度までは予想を証明することは絶望的だと考えていたため、今年度に入り予想を証明する戦略がたったことは大きな進展である。これにより、四元数体上の保型形式の周期の数論的性質の解明に向けて、大きく前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
四元数体上の保型形式の周期の数論的性質の解明に向け、Prasanna氏との共同研究を継続して行う。Prasanna氏の予想(志村予想の一般化)を証明する戦略がたったが、一方でこれを遂行するには莫大な計算を必要とする。各々の計算は実行可能であり、当面はある種の初等的な局所積分の具体的計算が必要とされる。この計算を逐次実行する。また、四元数体上の保型形式の整モデルやそのp進族は戦略のために必要不可欠だが、適切な文献がないようである。そのために、基礎理論の整備、それと平行して執筆を行う。
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Research Products
(5 results)