2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市野 篤史 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40347480)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 保型表現 / 周期 / 形式次数 / テータ対応 |
Research Abstract |
山名俊介氏(九州大)と共同で、大域Gross-Prasad予想の解決に向けて、一般線形群とユニタリ群に対し保型形式の周期の正則化の研究を行った。大域Gross-Prasad予想はユニタリ群上の保型形式の周期をL函数の中心特殊値で表す予想である。この予想に対しては Jacquet-Rallis による相対跡公式によるアプローチがあり、これを用いて最近Wei Zhangによってある種の局所的条件の下で大域Gross-Prasad予想は解かれた。一方、この局所的条件はエンドスコピーに関して強い制約を与え、Wei Zhangの結果からは大域Gross-Prasad予想から見て取れるはずの、エンドスコピーから生じる繊細な量である2の冪を見ることはできない。よって、この局所的条件を外すことは重要な問題であると考える。局所的条件を外すことにより、相対跡公式には本質的な解析的困難が大量に生じる。例えば、スペクトル展開においては収束しない周期を扱わなくてはならず、この問題を解決するため、周期を正則化し、収束しない周期に意味を与えた。周期の正則化はガロア対の場合には、既にJacquet-Lapid-Rogawskiによる理論があるが、それを大域Gross-Prasad予想に必要な場合に対して拡張した。一般線形群に対しては、Jacquet-Piatetski-Shapiro-Shalika によるカスプ形式に対する積分表示の理論を、一般の保型形式に対して拡張したこのに相当する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
山名俊介氏(九州大)との一般線形群とユニタリ群に対する保型形式の周期の正則化に関する共同研究は、当初の予想を超えて短い期間で満足のいく結果を得ることができた。またユニタリ群上の保型形式の周期の正則化の研究の副産物として、大域Gross-Prasad予想の非消滅性に関する結果を、部分的に証明することもできた。大域Gross-Prasad予想の解決に向けてはまだ多くの困難が残っていることが分かっているが、着実に一歩前進したことになる。 前年度までWee Teck Gan氏(シンガポール国立大学)と形式次数予想とテータ対応に関して共同研究を行っていたが、そこから奇数次特殊直交群の形式次数予想の解決に向けてのアプローチがあることが分かり、現在 Erez Lapid 氏(ワイツマン科学研究所)と共同研究を遂行中である。すなわち、Lapid-Maoによる降下法の研究により、シンプレクティック群の二重被覆に関する形式次数が計算できることが分かり、これとテータ対応を用いて奇数次特殊直交群に関する形式次数を数論的不変量と関連づけることができる。これは当初の目標を遙かに超えたプロジェクトになる。 また前年度から継続してKartik Prasanna氏(Michigan大)と共同で、四元数体上の保型形式の周期の研究を行った。 前年度は3回渡米し討論を行い、シーソー等式の簡略化を得るなど、研究は着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
山名俊介氏(九州大)と大域Gross-Prasad予想の解決に向けて、Jacquet-Rallis の相対跡公式の共同研究を行う。周期の正則化に関しては理論は完成したものの、まだ相対跡公式には多くの本質的な困難が残っていることが分かっている。まずは問題の分析・細分化を行うことを目標とし、それと平行して低ランク群である3次ユニタリ群に対して、相対跡公式の証明を試みる。 Erez Lapid 氏(ワイツマン科学研究所)との形式次数予想に関する共同研究では、既に形式次数が解析的なガンマ因子とエンドスコピーから生じる量で表せることは分かっている。この解析的なガンマ因子を数論的なガンマ因子と結びつける必要があるため、解析的なガンマ因子を定義する積分について、詳細な検証を行う。特に、2進体の有限次拡大に対して、測度から生じる2の冪が予想から現れるものと整合しているか、確認する。 Wee Teck Gan氏(シンガポール国立大学)とテータ対応に関して、新たな研究を始める。ユニタリ群のテータ対応に関しては、その記述には数論的不変量であるイプシロン因子が必要であるとDipendra Prasad氏により予想されており、その解決を目指す。手法としては、大域的手法、とくにArthurによる保型表現の重複度公式を用いる。 四元数体上の保型形式の周期の数論的性質の解明に向け、Kartik Prasanna氏(Michigan大)との共同研究を継続して行う。いまだに莫大な計算を必要とする段階であるが、各々の計算は初等的であり実行可能であるため、引き続きこの計算を逐次実行する。
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