2011 Fiscal Year Annual Research Report
多様体の退化を通じたミラー対称性及び可積分系の研究
Project/Area Number |
22740031
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西納 武男 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (50420394)
|
Keywords | トロピカル幾何 / トーリック多様体 / 正則曲線 |
Research Abstract |
昨年度の研究に引き続き、トロピカル曲線の、トーリックとは限らない多様体の幾何に対する応用を研究した。これまでに行った研究により、多様体が退化した極限の中にある一般に特異な正則曲線を、周囲の多様体を滑らかに変形するとともに滑らかにできるかという問題を考えた。退化する前の多様体がトーリックである場合は、正則曲線が有理曲線であれば大きな問題はないが、トーリックと限らない場合は一般に変形に障害があり、非自明な問題を与える。障害類を計算すること自体も問題であるが、より困難なのは障害類が実際に有効に働くかどうかを判定することで、コホモロジーの計算を超えた議論が必要となる。具体的には、倉西射像と呼ばれるコホモロジーの空間の間の非線形写像を計算する事になるが、それが具体的に計算されたのは過去に堀川穎二氏による5次曲面の場合に計算された例が代表的であるが、他にはほとんど例がなかった。今年度の研究では退化の考え方がこのような障害のある変形理論の研究に有効な手段を与えるという考えのもとで、上の状況における倉西射像を計算した。特に、その結果をK3超曲面の退化の場合に応用し、K3超曲面が4つの射影平面に退化する場合に、その退化した特異な多様体上の有理曲面及び楕円曲面が、いつ退化する前のK3曲面に持ち上がるかという問題について、1次変形するための簡潔な判定条件を導いた。高次の変形についても、障害を計算するアルゴリズムが得られるので原理的には計算できる。また、退化の考え方の他の応用として、森重文氏による標準束が負の代数多様体上の有理曲線の存在定理の、完全交差の場合のトロピカル曲線を用いた別証明を与えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多様体の退化を用いてミラー対称性や可積分系の幾何学的研究を行い、その中で従来の幾何に対しても新しい知見を得ることを目的としているが、多様体の退化の研究を通じて、ミラー対称性の研究に不可欠な正則曲線の研究を深めることができたと同時に、変形理論における倉西写像という従来計算が困難であった対象を計算する手法を与えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を継続して、多様体の退化を用いた幾何の研究を進める。これまでに得た一般的な計算技術を具体的な問題に適用して、ミラー対称性及び可積分系に関わる研究を進めると同時に、古典的な問題に対するアプローチを試みたい。
|