2011 Fiscal Year Annual Research Report
円周の微分同相群と普遍タイヒミュラー曲線の不連続群
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22740034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 能文 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特任助教 (60549294)
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Keywords | 円周 / 微分同相群 / 普遍タイヒミュラー曲線 / 収束群作用 / 相対的双曲群 / C*循環 |
Research Abstract |
今年度は以下の二点について研究した. 1.円周の微分同相群の離散部分群:円周の微分同相群の離散部分群の典型例であるフックス群は位相共役の不定性を除いて収束群として特徴づけられている.一般に,収束群作用は3点部分集合のなす空間に誘導される作用が固有不連続であるような作用に他ならない.そこで,3より大きい整数nに対して,n点部分集合のなす空間に誘導される作用が固有不連続であるような作用を考えることは自然である.そのような作用について収束群作用と同様の力学系的特徴付けがGerasimovによりなされている.今年度の研究では,フックス群のn重被覆の円周の2n+1点部分集合のなす空間に誘導される作用が固有不連続であることが明らかになった.この事実は,円周の微分同相群の離散部分群の研究に新たな視点を与えるものである. 2.収束群作用および相対的双曲群(尾國新一氏,山形紗恵子氏との共同研究):収束群作用は球面への共形変換群の作用の力学系的性質を抽出した概念である.その中で,幾何学的有限な収束群作用は相対的双曲群のBowditch境界への作用として実現されるものに他ならない.相対的双曲群とは群と極大放物的部分群と呼ばれる部分群の族との組のことである.与えられた群が相対的に双曲的である部分群の族は一般には無限個あり,そのような部分群の族を取り替えることにより,無限個の幾何学的有限な収束群作用が得られる.今年度の研究では,任意の非初等的な相対的双曲群に対して,無限個の幾何学的有限でない収束群作用を幾何学的有限な収束群作用の逆極限として許容することを示した.また,非初等的な収束群作用を許容する群の既約C*群環の単純性に関する論文を完成させた,
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
収束群作用およびその一般化についての研究やその結果の円周の微分同相群の離散部分群への適用についてはおおむね順調に進展しているが,普遍タイヒミュラー曲線の距離構造の研究が遅れているため.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で導入した円周の微分同相群の有限次元離散部分群の類似物として,円周のn点部分集合のなす空間に誘導される作用が固有不連続であるような部分群についても研究する.特に,そのような部分群がフックス群の有限被覆以外に存在するかという問題に取り組む.また,これまでの研究で得られた相対的双曲群及び収束群作用に関する知見を踏まえて相対的双曲群の円周への作用について研究する.
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