2010 Fiscal Year Annual Research Report
Floer理論によるラグランジュ部分多様体の対の交叉の研究
Project/Area Number |
22740043
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
入江 博 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (30385489)
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Keywords | シンプレクティック多様体 / Floerホモロジー / エルミート対称空間 / 実形 / 対蹠集合 |
Research Abstract |
シンプレクティック多様体の反シンプレクティックな対合による固定点集合として得られるラグランジュ部分多様体Lとそのハミルトン微分同相写像Φによる像Φ(L)との交点数を、LのZ_2係数のベッチ数の和で下から評価するArnold-Givental予想は、大域シンプレクティック幾何における基本的な予想の一つである。この予想は、1995年にコンパクト既約エルミート対称空間の実形Lの場合にY.-G.Ohにより示され、さらに一般の場合の研究が進んでいる。本研究は、当初このArnold-Givental予想をエルミート対称空間の一種である複素2次超曲面の合同とは限らない二つの実形の対(L_1,L_2)の場合に拡張して定式化し、Floerホモロジーを用いて証明することであった。ところが、今年度、一般の単調なコンパクト型エルミート対称空間の実形の対の場合にFloerホモロジーを計算することに成功し、当初の計画を大幅に拡張する成果が得られた。 田崎博之(筑波大学)と田中真紀子(東京理科大学)両氏の研究により、横断的に交わる二つの実形の交叉は対蹠集合になる。これは、コンパクト型エルミート対称空間の点対称に関する固定点からなる有限部分集合である。この結果から、Floerホモロジーを定義するための境界作用素の構成に必要な正則なstripの空間に自由なZ_2作用が入り、L_1とL_2の交叉そのものがFloerホモロジーを生成することがわかった。特に、既約の場合には、L_1とΦ(L_2)の交点数の最良評価が得られ、また、複素Grassmann多様体の二つの実形で、対のFloerホモロジーの階数がL_1とL_2のいずれのZ_2係数ベッチ数の和よりも小さい例を発見できた。これらは、代表者、酒井高司(首都大学東京)、田崎博之(筑波大学)との共同研究により得られた。対のFloerホモロジーが具体的に計算された例は、最近活発に研究されているトーリック多様体の場合以外では数少ない。本研究により、対のFloerホモロジーの具体的計算例を大量に構成できたことは、今後のFloerホモロジーの研究において大変有用である。
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