2011 Fiscal Year Annual Research Report
自明な結び目を識別する結び目不変量の表現論的構造解析
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22740048
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
長郷 文和 名城大学, 理工学部, 准教授 (30513634)
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Keywords | 結び目群 / SL(2,C)表現 / 指標代数多様体 / 2重分岐被覆 |
Research Abstract |
本年度の研究では,指標代数多様体が非自明な結び目を識別する構造について,特に非自明な結び目に対するSL(2,C)既約trace-free表現の存在性の解析を「同変」という性質をもつ指標からアプローチを行った. 研究代表者などにより,既約trace-free表現は,行列式が3以上の結び目,またはA-多項式の性質からsmallである結び目に対しての存在性は示されているため,行列式が1なるlarge非交代結び目とサテライト結び目にターゲットが絞られる.これらの結び目に対し2重分岐被覆を考える.研究代表者らの研究により,結び目群の既約trace-free表現の指標集合S_0から3次元球面内の結び目で分岐する2重分岐被覆の基本群のSL(2,C)表現の指標代数多様体Xへの2対1写像が構成でき,既約trace-free表現はXの非自明な指標に写ることが確認できる.ここで,有理タングル自明化数が1なる結び目(上記のサテライト結び目の一部を含む)に対し,Xは必ず非自明な指標を含むことが,2重分岐被覆のデーン手術による表示とゲージ理論によりわかる.ただし,写像φの像は同変な指標(被覆変換が自然に作用する表現の指標)であることが重要で,上記非自明な指標が同変であるかは不明であるため,S_0に既約trace-free表現が存在するかわからないという現状である(研究遂行中).また,この同変指標は,一般には存在すると思われるもので(存在性について共同研究中),任意の結び目に対するφの全射性を望むことは難しいということもわかった.更に,L. Ng氏により提案されたabelian knot contact homologyとXとの同型予想については,Xの同変指標集合との同型について考えるのが自然であるという考察を行うことが出来た(この予想についての研究も現在遂行中である).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「同変」という性質を用いる手法で問題を明らかにするアプローチができた.本年度の研究では,写像φの性質の深化を目標としており,その意味で,おおむね順調に進展していると判断できる.また,この研究により,「同変」というアイデアが,contact homologyに結びつく重要な概念である可能性が出てきた様に(新たな性質を証明するところまでは到達していないが)新たな研究も展開してきている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,指標代数多様体の国外の専門化との研究交流,研究打ち合わせ等が殆んど出来なかったこともあり,来年度は,国内外の専門家との研究打ち合わせ等を積極的に行いたい.特に,アメリカの専門家との打ち合わせ等は,私にない研究視点を取り入れる上で非常に重要であると思われるため,是非,機会を見つけて行いたい.
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