Research Abstract |
統計的推測理論において,分布が途中で切断されているような非正則な場合の情報不等式の導出について,適当な事前分布と損失関数に関するBayesリスクを定義し,推定量のBayesリスクに対する情報不等式を求め,さらに,その不等式による下界の達成可能性についても検討することを目的とする研究を進めた.これまでの研究では,両側で切断されているような分布の場合, (i)両端点での密度の値が等しい(ii)両端点での密度の微分係数の和が0である という条件の下では,Bayes推定量が得られ,そのリスクを計算することにより,Bayesリスクに対する情報不等式を求めることができた.しかし,実際に適用する場合には,上記の条件を満たすことは難しく,条件(i),(ii)を外した場合にも適用可能な,より一般的な情報不等式を導出する必要がある.そこで,より一般の場合に適用可能となる情報不等式を導出するために,まず条件(i),(ii)を外した場合について,極値統計量の漸近情報量損失に関する研究を行った.その結果,条件(i),(ii)を外した場合についても,極値統計量と漸近補助統計量の組から成る統計量は,2次のオーダーまで漸近情報量損失を起こさないことが分かった.さらに,(i)条件を外したことによって,極値統計量は2次のオーダーにおいて,密度の台の区間の内部に関する情報量だけでなく,実は密度の台の両端点での高さに関する情報量についても損失していることが分かった.今後め研究では,この結果を用いて,条件(i),(ii)を外した場合のBayesリスクに対する情報不等式の導出を目指す.
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