2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740054
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
笹本 智弘 千葉大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (70332640)
|
Keywords | 無限粒子系 / 可積分系 / ランダム行列 / KPZ方程式 |
Research Abstract |
今年度は、1次元KPZ方程式の界面高さの揺らぎの確率分布に関する研究を中心に行った。KPZ方程式に対しては、当初wedge型と呼ばれる初期条件に対する解が得られていたが、平坦や定常な状況における揺らぎがどうなるかが問題であった。今年度は、まず空間の半分で定常的な初期上件の場合に界面の揺らぎの分布に対する表式を得た。wedge型の場合と類似している面もあるが、積分経路の変形や新たな組合せ的等式が必要となるなど非自明な点がいくつかあった。これは、ASEPと呼ばれる離散モデルにおいては、空間の半分でベルヌイ型の初期条件から始める場合に相当する。 その後、この解析を発展させることにより、定常的な状況(ブラウン運動型初期条件)での高さ分布と2点相関関数の表式を得ることに成功した。解を得るには、初期条件の変形、新たな組合せ等式の発見、行列式構造を得るための工夫など多くの新しいアイディアが必要であった。これらの量は、1986年にKPZ方程式が導入されて以来、繰り込み群やモード結合理論など、様々な物理的近似手法でアプローチされていたが、今年度の研究により近似無しの解が得られたことになる。 同時に、ASEPの揺らぎの行列式構造に関する理解も深めつつある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
定常状態における高さ分布や2点相関の研究において具体的な成果を上げるにはもう少し時間が必要かもしれないと思っていたが、いくつかのアイディアを得て解を得ることが出来た。当該分野は現在大いに進展しており、他の研究者達の結果も含め対象の理解が全体として進んでいる事が大きいかもしれない。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初は、KPZ方程式における様々な初期条件の場合を調べることも大きな目的であったが、定常は自身で解を得ることが出来たので、まずはこの理解を深める。2012年度中に論文を発表したい。また2011年に、Borodin,Corwinがmacdonald過程とよばれる枠組みを提案したので、その理解を深めKPZ方程式やASEPと呼ばれる離散モデルの解構造を明らかにしたい。
|
Research Products
(10 results)