Research Abstract |
今年度は主に, H∞制御問題から生じる半正定値計画問題に対して議論した. 一般にH∞制御問題から生じる半正定値計画問題(SemiDefinite Programming problem, SDP)は高精度に求解することが難しい, ということが知られている. この原因がSDPまたはSDPの双対問題が実行可能内点解を持たないからではないか, と予想した. その予想のもとで, "では, 実行可能内点解を持たないSDPが生じるのはなぜか", という疑問に答えるべく本研究を推進した. この予想は, 面的縮小法を利用することで調べることができる. その結果, 元のH∞制御問題が以下の性質を持っている際には, 得られるSDPまたはその双対問題が実行可能内点解を持たないことが分かった. (1) 可安定でない, または可検出でない. (2) 不変零点に関するランク条件を満たさない. (1)が言っていることは, 元の制御対象が工学的に意味をなさない, つまり設計の段階で取り除かれるべき条件で, こういった制御問題は不自然である, ということである. 一方, (2)は興味深い条件である. というのも, H∞制御問題は代数的Riccati等式を解くことで求解できることが以前から知られていた. 90年代からSDPが飛躍的に研究される様になり, 現在ではSDPを利用することが一般的である. (2)の式は, この代数的Riccati等式が解を持つための条件に酷似している. これらより, 元の制御対象が工学的に不自然であれば得られるSDPが実行可能内点解を持たず高精度な求解が難しい, ということが分かった. 一方で, たとえ工学的に自然であってもSDPの求解が困難である場合が多々あるためこれだけが本質ではない, と考えている.
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