2011 Fiscal Year Annual Research Report
求積公式に内在する幾何構造および組合せ論的構成法の研究
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22740062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
澤 正憲 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (50508182)
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Keywords | cubature / Euclidean design / Sobolevの定理 / Bajnokの定理 / 直交多項式 / 不変調和多項式 / 球面対称積分 |
Research Abstract |
熱方程式の解や数理ファイナンスにおける金融商品の理論価格は確率変数の期待値として表されるが,一般にこれらの期待値の直接計算は難しく,近似公式が必要となる.期待値の一計算手法として,Lyons-Victoir(Proc.R.London Soc.A,2004)はWiener空間上の求積法を提案した.そこではガウス積分に対するcubatureformula(以下,CFと称する)が基幹的役割を果たす.Lyonsらの結果を受け,研究代表者は,2次元ユークリッド空間上のガウス積分に着目し,幾つかの例外的な状況を除いて最小CFが存在しないことを証明した.これは,交付申請書研究実施計画に述べた,最小CFの非存在予想を肯定する結果と見なすことができる.なお,この成果は坂内英一教授(上海交通大)他との共同論文として代数的組合せ論の国際的専門誌に掲載された.(後述13.研究発表参照). 次数t以下の任意の多項式に対して積分値と重み付き和が等しいCFを次数tであるという.S.L.Sobolev(Soviet Math. Dok1., 1962)は,球面上の一様測度に関する積分に対して,実既約鏡映群Gの軌道からなる(G不変な)CFがt次であることと,次数t以下のG不変多項式についてCFの等式が成り立つことの等価性を示した.これを受け,研究代表者は,Sobolevの定理を一般の球面対称積分について拡張し,例外型を含むすべての実既約鏡映群について,不変な最小CFの分類を行った.この成果は,野崎寛講師(愛知教育大)との共同論文としてまとめられ,数学の国際的一般誌に掲載された.(後述13.研究発表参照)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」に掲げた最小CFの点の幾何的特徴付けおよび存在性に関する研究については,基礎的な成果が幾つか得られており,それに応じてまとめられた学術論文5編程度が国際誌に採録されていることからも,おおむね順調に進捗しているものと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究で,最小CFが存在するための幾つかの必要条件を示し,またそれにより様々な形で最小CFの非存在を証明した.一方で,最小CFの存在は僅か一例確認されたのみであった.このことから,次年度(最終年度)は,当初の研究計画を少し修正して,より最小CFの非存在予想を信用する立場に傾倒し,最小CFが存在するための必要条件の導出に力を入れたい.また,regularityという強い性質をもつ組合せデザインの構造を用いて,必ずしも最小ではないが,少ない近似点からなるCFの構成法を模索したい.
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