2012 Fiscal Year Annual Research Report
一般確率論・量子論理・圏論など普遍的視点からの量子論へのアプローチ
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22740078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮寺 隆之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50339123)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 量子論基礎 / 量子測定 / 量子情報 |
Research Abstract |
平成24年度は、主に量子測定に関わる数理的研究を行った。量子測定の古典論と異なる最大の点は、同時に測定することが不可能な物理量が存在することである。この同時測定不可能性の概念を、一般の操作どうし、あるいは操作と物理量との間、などに拡張した。すなわち、ある操作ともうひとつの操作が同じ測定過程(インストゥルメント)の部分として書けるならば、これら操作は両立可能であると呼び、そうでなければ両立不可能であると呼ぶ。このように概念を拡張することにより、同時操作不可能性の問題はより一般的な視点からとらえることが可能になった。また、特に与えられた物理量と両立可能な量子チャネルの構造を調べ、物理量の空間に粗視化の観点から自然に入る順序構造と、量子チャネルの空間に量子的粗視化の観点から自然に入る順序構造に密接な構造があることがわかった。本結果は、これまで定量的な手法によりさまざまな形が得られていた情報撹乱関係について質的な視点から基盤を与えることになるのではないかと期待している。本研究は、主にTuruku大学のT.Heinosaariとの共同研究である。 また、平成24年度には量子的構造を一般確率論や圏論などを視野に入れながら、認識過程の記述に適用することも行った。これは産業技術総合研究所のS.Phillipsとの共同研究である。 また、量子暗号に量子論の基礎的問題(Mean-King問題)を適用する研究も、中央大学の吉田雅一氏と行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた通り、Turku大学やYork大学との研究協力関係を築くことができ、おおむね順調に研究は進展している。特に、量子測定の数理的研究においては予想を超えた発想が得られており、今後大きく発展していくことを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後半年間は特に量子論基礎においても特に基本的な操作である量子測定の構造について、インストゥルメントや作用素値測度などを用いる作用素論の一般的な枠組みを用いて調べる。前年度までの研究により、量子測定の最大の特徴として両立しない操作があることがわかったが、この性質について定性的・定量的両側面からのアプローチを試みる。定性的な性質に関する課題としては、物理量と量子チャネルに関する順序構造を用いた情報攪乱定理の定性的定式化と、与えられた物理量について最小限の攪乱しか与えない測定とはどのようなものであるかについての研究が挙げられる。また、この一般的性質を用いると、これまでさまざまに提案されてきた情報獲得と攪乱の強度についての定量的な関係式が自然に得られる可能性があることを示したい。より具体的には、Wernerらにより提唱されたcompletely bounded normを用いた攪乱の定量化に我々の議論を適用し、測定される物理量のnoise度が量子チャネルの攪乱度とどのように関係するかについての定量的な表現を求めたい。 また、本年度後期は最終年度として、これまでに得られた結果のとりまとめを行い、来年度以降により広く情報発信を行うための国際研究集会の開催の可能性などを探る予定である。この研究集会については、これまでに関係をきづいてきた諸外国の共同研究者(英国・フィンランド・カナダなど)と協力を行い実現を目指す。 以上の研究成果の発表及び議論のために、本年度7月にカナダで行われる国際会議の参加と本年度9月にミュンヘンで行われる予定の国際会議への参加を計画している。また、フィンランドのトゥルク大学へ共同研究のための出張を行いたいと考えている
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Research Products
(4 results)