2013 Fiscal Year Annual Research Report
一般確率論・量子論理・圏論など普遍的視点からの量子論へのアプローチ
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22740078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮寺 隆之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50339123)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 量子測定理論 / 量子論基礎 / 順序構造 |
Research Abstract |
量子論のもっとも原始的な操作である量子測定について研究を行った。まず両立(不)可能性について一般的な議論を行った。具体的には、二つの操作の両立不可能性について強い不可能性と弱い不可能性という階層を導入した。 また、その後物理量と量子チャネルの両立可能性について、順序構造を用いた議論を展開した。物理量の空間と量子チャネルの空間にpost-processing(粗視化)を用いた順序構造を入れたのち、特定の物理量に対してそれと両立可能な量子チャネル全体がどのような構造をなすかについて調べ、質的な情報攪乱定理ともいうべき関係を発見することができた。また、特定の物理量と両立可能な量子チャネル全体は、ある特定の量子チャネルから生成されるという主イデアルの構造を持つことが示された。この主イデアル定理は、量的な情報攪乱定理の基礎ともなる結果である。 また、その後、この順序構造をもとに、同時測定可能性と連続測定の関係について議論を行った。その結果、同時測定可能な物理量は連続測定可能でもあること、さらに最初の測定は二回目に測定を行う物理量とは無関係に選べることがわかった。この最初の測定を記述する量子チャネルはまさに主イデアル定理において登場するもっとも擾乱の少ない量子チャネル(最初に測定する物理量と両立可能な量子チャネルの空間の中で)に他ならない。このように今年度の結果は、量子測定における順序構造という新たなる理論を形作る第一歩と言えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画と異なる点は、量子論について順序構造をもとにした新たな見方が得られつつあることである。この構造自体は、量子論を超えた一般の枠組みにおいても成立するが、情報攪乱定理など有意義な結果がどの程度一般論において成立するかはまだわかっていない。このように、当初の計画とは異なる点も多いが、量子論の基礎を研究するという観点から全体として見た進度として評価した場合にはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
順序構造をもとにした量子論の新しい見方について、より一層の理解が求められている。その後、これらの結果がどの程度一般的な枠組みにおいて成立するかを考えたい。特に、ここで得られたさまざまな結果はStinespring表現定理に強く依存しているが、一般確率論においてその類似物がどの程度成り立つのかを考えることがまず追求すべき点である。また、結果を量子チャネルキャパシティの問題などに応用することも今後考えていきたい。平成26年度は本研究課題の最終年度でもあるため、全体の総括も行う。
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Research Products
(4 results)