2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22740087
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐々木 格 信州大学, ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点, 助教 (50558161)
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Keywords | 量子場 / 基底状態 / 量子電磁力学 / ハミルトニアン / 非可換調和振動子 / Liouvilleの定理 |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き準相対論的Pauli-Fierzモデルおよび準相対論的Nelsonモデルのスペクトル、特に基底状態の性質を研究した。また、これに関連して非可換調和振動子を考察した。 (1)一般的な運動量を保存するハミルトニアンの摂動に対して束縛エネルギーが真に正となる条件を導出した。これは準相対論的Pauli-Fierzモデルに対して前年度までの研究で開発した手法をより一般の形の運動エネルギーを持つハミルトニアンへ適用可能なように一般化したものである。またハミルトニアンの自己共役性としてFriedrichs拡大をとることができるようになり幅広い応用を持つようになった。 (2)N個の相対論的粒子が量子ボース場および弱い引力型ポテンシャルVと相互作用する系に対して、量子場と粒子の相互作用が十分強いときに全系の基底状態が存在することを証明した。このとき、必要となる条件は、赤外正則条件の他に、(-△)^(1/2)+NVが負エネルギーの束縛状態を持つという仮定である。 (3)非可換調和振動子を考察し、量子場で使われていたpull-through公式・個数評価などの手法をこのモデルに適用した。これにより非可換調和振動子に対してβ>αかつαが十分大きいときにの基底状態の重複度は2以下であることを証明した。また摂動展開を2次まで厳密に評価することによりαとβが1より大きく、α≠βかつ|β-α|が小さいときに基底状態は一意であることを証明した。 上記の(2),(3)は九州大学の廣島文生氏との共同研究である。このために、出張旅費を使用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究でnon-local作用素のスペクトル解析(特に基底状態の解析)を行うという問題に対して、この系の束縛条件を一般的な条件の下で証明することができた。これによりnon-local作用素の解析で難しいと考えられていた部分を解析すること事ができるようになり、当初の目標であった問題に対して一定の成果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、準相対論的Pauh-Fierzモデルのスペクトル解析を行う。これに対するN体の基底状態の存在はまだ示されていない。また共鳴極の存在は予想されているものの証明はまだできていない。前者に対する一つの方法は、LiebとLossらによる非相対論的モデルに対する基底状態の存在証明をこのモデルへと拡張することであるが、それに対してnon-local作用素の解析をする手法が十分得られているといえない。後者に対してはFeshbach mapと作用素論的繰り込み理論を構成することが現在知られている唯一の証明法であると考えられるが、これに対してもnon-local作用素は具体的な計算を行うことができないため進展はない。これらの問題を解決することが今後の課題である。
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Research Products
(4 results)