2011 Fiscal Year Annual Research Report
非線形波動方程式の非線形項の幾何的構造と解の特異性
Project/Area Number |
22740088
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
津川 光太郎 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (70402451)
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Keywords | 関数方程式 / 非線形 / 分散型方程式 / 初期値問題 |
Research Abstract |
非線形分散型方程式の可解性や漸近挙動について調和解析的手法を用いて以下の三点に関する研究を行った。 一つ目は、ある概周期関数のクラスおよび準周期関数のクラスを初期値とするKdV方程式の時間局所・大域的適切性についてFourier制限ノルム法を用いて研究した。非線形分散型方程式に対するこの種のクラスにおける適切性の研究はこれまでほとんど無かった。慨周期・準周期関数の空間を上手く定義することが主なアイデアである。 二つ目は、ホワイトノイズ型の外力項をもつ確率KdV方程式について研究した。外力項の影響により解の時間変数に関する滑らかさが低くなることが難しい点である。滑らかさの低い解を扱う手法としてI-methodという手法が知られているが、これまで確率微分方程式に対してこの手法を適用した結果は無い。ストッピングタイム法と呼ばれる確率微分方程式の研究手法を上手く利用しI-methodを適用することにより時間大域的適切性を示すことに成功した。 三つめは、高次KdV方程式および高次mKdV方程式に対する一次元トーラス上での適切性の研究である。これらの方程式は非線形効果が強く、またトーラス上では平滑化効果が得られないため、扱いが非常に難しいことが知られており、適切性に関する既存の結果はこれまで無かった。 normal form methodを用いて方程式の持つ強い対称性を利用することにより、ある種の平滑化効果が得られることを発見した。この効果は適切性の研究に役立つと思われ、来年度も継続して研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた三番目の項目である高次KdV方程式および高次mKdV方程式に対する一次元トーラス上での適切性の研究において、高次の多重線形評価の際に対称性や保存則を利用することによってある種の相殺現象が起こり、より良い評価が得られるという新たな知見を得ることが出来た。このため、来年度へ継続して研究を行うことが必要となり科研費の繰り越しを行った。このように、当初予定していたより研究が進展している状況である。 概周期関数のクラスおよび準周期関数のクラスを初期値とするKdV方程式の時間局所・大域的適切性に関するFourier制限ノルム法を用いた研究、および、ホワイトノイズ型の外力項をもつ確率KdV方程式についての研究は順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
問題点は無い。高次KdV方程式および高次mKdV方程式に対する一次元トーラス上での適切性の研究においては、あらためて多重線形項の計算をその対称性に着目しながら行う予定である。これにより、非線形の持つ平滑化効果がより精密に評価を得て、正則性の低い関数空間上での適切性が得られる予定である。
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