Research Abstract |
本研究の課題の1つである,2重冪型非線形シュレディンガー方程式に対する定在波の存在および解の挙動について考察した. 特に,エネルギー臨界冪と劣臨界冪の2つの非線形項を持つ場合を考察した. 単独のエネルギー臨界冪型非線形シュレディンガー方程式は,振動する定在波を持たない事が知られている.一方,単独のエネルギー劣臨界冪型非線形シュレディンガー方程式は,振動する定在波を持つ.そこで,エネルギー臨界冪と劣臨界冪の両方を持つ我々の方程式において,振動する定在波が存在するか否かは興味深い問題である. この問題に対して,次の結果を得た: (1)空間4次元以上ならば,基底状態が存在する.よって振動する定在波が存在する. (2)空間3次元で,エネルギー劣臨界項の係数が小さい場合は,基底状態は存在しない. こうして,エネルギー臨界の非線形性を持っていても,振動する定在波は存在し得る事を示せた. エネルギー劣臨界項の係数が大きい場合は,まだ結果が得られていないので,今後の課題とする. 次に,基底状態を利用したポテンシャルの井戸を導入し,そこでの解の挙動を爆発・散乱の立場から分類する事を目指した.この問題に関し,次の結果が得られた: (3)空間5次元以上で,初期値の"汎関数K"の値が正であれば,対応する解は散乱解である,つまり,時間無限大において,自由解に漸近する. (4)空間4次元以上で,初期値が球対称かつ"汎関数K"の値が負であれば対応する解は爆発する. この結果の証明において,Kenig-Merleの議論を応用したが,2つの冪型非線形項を持つ事や高次元の場合も扱っている事から,技術的な面において,幾つかの困難があった.その困難を比較的分かり易い形で克服できたことは価値があると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的の1つである2重冪型非線形シュレディンガー方程式に関しては,当初の目的どおり,基底状態の存在と,基底状態を利用したポテンシャルの井戸における解の挙動をほぼ明らかにする事ができた.
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