2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22740093
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
赤木 剛朗 神戸大学, 大学院・システム情報学研究科, 准教授 (40433768)
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Keywords | 非線形解析 / 発展方程式 / 解の漸近挙動 / 偏微分方程式 / 関数解析 |
Research Abstract |
様々な非線型問題に於いて,ラプラシアンを変形・一般化して得られる非線型楕円型微分作用素が現れる.ここではそのような非線型作用素を主要項に持つ発展方程式を考え,それらの解の漸近挙動とそのメカニズムを明らかにする.平成23年度は,空間非一様な指数(以下,変動指数)を持つp(x)-Laplacianと呼ばれる非線型楕円型作用素を主要項に持つ発展方程式に焦点を当て,適切性や比較原理などの基本的事項の検証および解の挙動・性質を調査し,最終的にはp(x)-Laplacianを主要項に持つ発展方程式が記述する非線型拡散の性質を明らかにすることを目的として研究を行った.変動指数を含む非線型問題は,機能性流体や画像処理などの工学的問題に現れる.また数学的に見ても,偏微分方程式論に留まらず,関数解析や実解析の展開を促す新しい問題である.そのため近年,北欧を中心に国外で盛んに研究が行われてきたが,国内に於いてはまだ研究例が多くない.特に放物型方程式の研究に関しては世界的にも研究例が少ない. 研究成果の具体的内容:1.変動指数空間のamalgam空間を導入することで,p(x)-Laplacianを主要項に持つ非線型拡散方程式が劣微分作用素を含む発展方程式の枠組みに帰着されることを発見した.これによって,適切性,解の比較原理,周期解の存在などが保証される. 2.解の長時間挙動(定常解への収束)を示した.特に外力項がない時,指数p(x)が2より大きいならば退化拡散,2より小さいならば特異拡散が起こることを示した. 3.fast/slow拡散極限(p(x)が発散したときの極限問題)について,解の収束性と極限問題の表現を明らかにした.さらに指数が領域の一部でのみ発散する場合は,非線形拡散方程式と仮似変分不等式の融合問題として極限闇題が表現されることを示した. 継続課題のfast diffusion方程式の解の漸近挙動については,これまでに得られた漸近形の安定性判定条件の枠からはずれる幾つかのケースについて個別の解析を行い,不安定な正値漸近形を発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画に述べた内容は,Lp-Lq型の減衰評価を除いて完遂している.
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間の当該研究課題の遂行によって,新たに以下の2つの問題が生じている.来年度はこれらを解決し,3年間の研究成果のまとめを行いたい. 1.Fast diffusion方程式の漸近形の安定性と領域の対称性の関係:過去2年間の研究で,漸近形の安定性と付随して現れる半線形楕円型方程式の非自明解の変分的な性質が深い関係を持つことが分かってきた.そのような非自明解の変分的性質は空間領域の対称性に大きく影響をうけるため,空間領域の対称性が漸近形の安定性にどのような影響をもたらすか明らかにする. 2.変動指数を含む二重非線形問題:平成23年度の研究によって変動指数を含む非線形拡散方程式の基本的な取扱い方は分かってきたが、非線形性が高く従来の定数指数の場合でも制限の大きかった二重非線形問題では変動指数特有の困難が生じる.それらを克服し,可解性の証明や漸近挙動の解析をするための手法を提案する.
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Research Products
(5 results)