2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740100
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
野邊 厚 千葉大学, 教育学部, 准教授 (80397728)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 解析学 / 関数方程式論 / 数理物理学 / 可積分系 / 超楕円曲線 |
Research Abstract |
本年度は主に次の研究を行った.1)超楕円曲線の加法を用いて周期離散戸田格子の時間発展を幾何学的に実現した.周期離散戸田格子の時間発展は,そのスペクトル曲線である超楕円曲線のヤコビ多様体における平行移動に他ならないことがよく知られている.また,超楕円曲線の対称積から因子類群(ピカール群)への全射を通して,この対称積上に加法を定めることが可能である.ヤコビ多様体はピカール群と同型であるため,この全射を通して周期離散戸田格子の時間発展を対称積上の加法と見なすことができる.さらに,対称積の加法は超楕円曲線と他の2曲線との交叉を用いて幾何学的に実現できるため,これらの曲線の交叉が周期離散戸田格子の時間発展の幾何学的実現を与える.本研究においては,周期離散戸田格子の幾何学的実現を与える曲線族を任意の格子サイズ(超楕円曲線の種数)に対して具体的に構成し,各曲線は周期離散戸田格子の保存量を用いて表されることを示した. 2)トロピカル超楕円曲線の加法を用いて周期箱玉系の時間発展を幾何学的に実現した.周期離散戸田格子の超離散極限として得られる超離散周期戸田格子(周期箱玉系)の時間発展は,トロピカル超楕円曲線のヤコビ多様体上の平行移動であることが知られている.また,この平行移動はトロピカル超楕円曲線の対称積における加法と見なすことが可能であり,さらに,この加法は,トロピカル超楕円曲線と他の二つのトロピカル曲線との交叉を用いて幾何学的にも実現できる.本研究においては,周期箱玉系の幾何学的実現を与えるトロピカル曲線族を任意の格子サイズ(トロピカル超楕円曲線の種数)に対して具体的に構成し,各トロピカル曲線は周期箱玉系の保存量を用いて表されることを示した. 3)種数2の超楕円曲線の倍角写像から,適切な変数をとることにより,有理写像で与えられる2次元複素力学系を構成した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,楕円曲線の群構造の定める有理写像力学系の分類を行う予定であったが,超楕円曲線を用いた周期離散戸田格子の幾何学的実現に関する研究が予想以上に進展したため,こちらの研究に注力し満足のいく結果を得ることができた.とくに,超離散化の手続きを用いることで,周期箱玉系のトロピカル超楕円曲線を用いた幾何学的実現が得られたことは大きな成果である.また,可解カオス系に関する研究についても,超楕円曲線の倍角写像を用いて有理写像で与えられる複素力学系を具体的に構成することができた.このような理由から,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は研究計画の最終年度にあたるため,研究成果の発表に力を入れる.まず,現在執筆中の論文"A geometric realization of the periodic discrete Toda lattice and its tropicalization"を4月中を目処に完成し,査読付き論文誌へ投稿する.また,学会や研究集会などで適宜研究発表を行い,研究成果の周知に努める.上記論文で用いた手法は他の可積分系へも適用可能であるため,B型戸田格子,KdV方程式などの可積分系の幾何学的実現についても研究を進める.可解カオス系についても,これまでの研究成果を論文にまとめ,査読付き論文誌へ投稿する.
|
Research Products
(5 results)