2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740102
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
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Keywords | 関数方程式論 |
Research Abstract |
液滴の運動のモデルである体積保存条件つき放物型自由境界問題に集中した。接触角の存在を表す特性関数を滑らかにする正則化を施し、離散勾配流法に持ち込み、時間ステップの極限をとる手順で正則化された非線形な問題の弱解を構成した。証明の方法はそのまま数値計算にも利用でき、水滴の運動などの計算結果が得られた(論文1)。 このように構成された解でさらに正則化パラメータの極限をとるために、また自由境界に関する情報を抽出するために、一様なリプシッツ評価が決定的な役割を持つが、この評価を得るのに全空間の問題における最小化関数の存在、または有限領域の問題における境界評価のどちらかが必要になることがわかった。どちらかのアプローチによる解決は次年度の課題となる。さらに、数値計算の結果の実験との比較、正則化の物理的な意義などについて研究を行う予定である。 スカラー関数に対する自由境界問題に加え、曲面に対する問題に取り組んだ。これは、液滴に90度より大きい接触角を許し、極小曲面オペレータを考えるという一般化である。標語的に言えば、体積保存条件つき平均曲率流に相当する問題を考えることになる。22年度の間、この問題の多相バージョンの数値解法を開発し、水中の泡の上昇のシミュレーションに応用した。また、解析へのアプローチの糸口をつかんだ。熱方程式を短い時間ごとに解きそのレベルセットを見るというBMOアルゴリズムのアイデアを用いて、液滴が複数存在する多相の場合に対し体積を保存する平均曲率流を構成し、その形式的な証明を行った(論文2、詳しい内容は執筆中である)。この場合、レベルセットを調べる対象はベクトル型の2相放物型自由境界問題の解になる。2相自由境界問題の解の性質を調べ、制約条件つきの多相流の構成を研究することは23年度の課題である。
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