2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740102
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
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Keywords | 関数方程式論 |
Research Abstract |
液滴の形状やその運動状況を決める際、接触角が重要な要因となる。接触角が生じるのは3つ以上の異なる物質(相)が交わる場所においてであるため、接触角を表現するには3つ以上の相を含む界面運動を考える必要がある。本年度は、複数の界面が運動するモデルの開発に取り組んだ。 モデルとして表面エネルギーの勾配で与えられる平均曲率流を用いて、多相の場合に記述した。また、液滴の体積が一定である(もしくはある法則に従う)ため、各フェーズの体積に対して拘束条件を設ける必要がある。このように得られる多相の体積保存平均曲率流という問題は複雑で、特異性の出現や位相変化もあり、ジャンクションを含めた方程式による記述や解析が困難である。 このような問題に対して、多相の位相変化や特異性、そして拘束条件に対処できる数値解法を開発した。熱方程式を短い時間ごとに解きそのレベルセットを抽出するBMOアルゴリズムが基礎となり、この近似法によりジャンクションの運動を調べる方法の糸口をつかんだ。ジャンクションの運動の詳しい解析を進めていくのは次年度の課題となる。また、数値計算において一様な格子上で界面の運動が止まってしまうというBMO特有の問題を解決した。 理論的には、レベルセットを調べる対象はベクトル型の2相放物型自由境界問題の解になる。この自由境界問題の解の性質の研究が続き、制約条件つきの多相流の構成に応用するのが24年度の課題である。 現在、以上の結果を利用して液体をみたされた容器の壁に付着した気泡の運動のシミュレーションを行っている。この場合、流体力学のモデル方程式と接触角をもつ界面の運動方程式を連成させることになる。精密なモデルを構築するには、ヒステレシス効果やVan der Waals力を考慮する必要があると考えられ、次年度にこれらの影響を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
曲面の運動を表すモデル(ベクトル型問題)について目標であった近似方法の開発とそれの数値計算による実現がほぼ完了し、より精密なモデルについての考察をしながら理論的解析を進めているので、研究が順調に進展していると判断した。双曲型問題は数値計算による解析に限られているが、問題が難しいため予想された状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
曲面に対する問題の解析、双曲型問題の解析と液滴のより精密なモデルの開発を進めていく。接触角を表現するためには、多相の問題で与えられた角度で安定になるジャンクションを構成する必要がある。MBOアルゴリズムを基にした方法を利用し、この方法でジャンクションの運動をどこまで調べることができるかを探る。また、体積保存つき多相曲率流に関連する自由境界問題の解の存在と性質について研究を進める。 双曲型問題については最初に定めた方針に沿って解析を行う。
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