2012 Fiscal Year Annual Research Report
複数の界面ダイナミクスとその組み合わせによる界面の特異的挙動の解析
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22740109
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大塚 岳 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00396847)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 曲率流方程式 / 結晶のスパイラル成長 / 等高線法 / 退化放物型方程式 / 粘性解 / 反応拡散方程式 |
Research Abstract |
バンチング現象について界面の発展方程式および等高面法の視点からの研究で、研究を進めていく過程でスパイラルの運動を表す等高線方程式における解のリプシッツ連続性に関心が発生し研究を行った。本研究はもともと離れていたステップがどれだけ接近するかを意味するもので、解がリプシッツ連続性を持つとステップはバンチングを起こさないことを意味する。 本研究ではスパイラルの等高線方程式を近似する放物型方程式を導入し、その滑らかな解のリプシッツ定数に関するアプリオリ評価と近似パラメータに関する一様優解性および同程度連続性について考察した。これは近似方程式の解がもとの方程式の解を近似することを示し、かつその近似解の評価からもとの解のリプシッツ連続性を示すのが目的である。この研究の結果アプリオリ評価については時間に関して指数増大する結果を得た。他方一様有界性、同程度連続性について従来の結果が解の2階偏導関数の有界性を用いていたのに対し、本研究では証明方法を改めることでリプシッツ定数の有界性のみで証明することに成功した。これにより、滑らかな初期値に対する近似方程式の可解性が得られれば、もとの解は時間局所的にリプシッツ連続であることを得る。 またスパイラルの運動を表す等高線方程式を用いて、単独のスパイラル、および同じ回転方向を持つスパイラルのペアによる結晶表面の成長の数値計算実験を行った。本研究においてはまずスパイラルの等高線方程式の解から結晶表面の高さ関数がみたす微分方程式の解を直接的に求める方法を導入した。その結果表面成長の数値化が容易になり、単独の場合では結晶成長理論で得られている成長速度の理論的な値とほぼ同じ値になることが得られた。ペアの場合ではペアの中心が十分近い場合の成長速度の新しい公式を導出し、その公式と数値計算実験の結果が十分近いという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バンチング現象の研究について、本年度は複数の遷移層がバンチングを引き起こす多重安定アレン・カーン型方程式の研究を行い、その解析手法を構築することが目標であった。しかしこれは十分に達成されず、その点では多少の遅れが見られる。他方スパイラル成長における等高線方程式では前年度の束の安定性の証明から考察して解のリプシッツ連続性に関する研究へ発展するなど、当初の計画以上に進んでいる点も見られる。 綾織り模様の数理モデルについて本年度は研究計画に含めなかったが、前年度の数値計算実験においてバンチング現象が発生する様子が見られているので、バンチング現象の研究の遅れが本研究に多少の影響を与えると考える。バンチング現象に対しては、現在のステップの位置を等高線法で定式化したモデルからステップを含む結晶表面全体の定式化する方法への改良を検討しており、その資料収集と考察を続けている。その点、綾織り模様の数理モデルについては比較的順調に進んでいると言える。 中空孔の数理モデルについて本年度はトイモデルによる数値計算実験と考察を計画した。その結果いくつかの数値計算例で実際に中空孔ができる様子を見た。トイモデルの解の様子から等高線方程式における不連続な粘性解について考察を進めているが、この研究では本年度はまとまった成果が得られていない。前年度の、逆向きのスパイラルが制止する状況で不連続な定常解を構成した研究は本問題に繋がる研究で、現在はその不連続な定常解が表す定常曲線が安定であることを比較原理から証明する研究を行っている。その手法が中空孔形成の証明へと拡張されると考えている。この点において本研究は順調であるが、中空孔の現象を数理モデル化しトイモデルとの比較を行うという点では目立つ進展がなく、進捗にやや遅れが見られる。 以上の理由により、全体的には当初の計画よりやや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
数値計算実験による現象の把握はかなり進んでいるため、今後は各課題の数学的な解析を重点的に進める。 バンチング現象については収集した資料のより精密な再精査を行うとともに、漸近展開による解析等現象の全体像の把握に勤める。漸近展開による解析は界面の発展現象に関する反応拡散方程式と等高線方程式の関係の研究でも多く用いられる手法であるが、この分野で近年集合論的なアプローチによる研究が発展を見せており、この手法による考察も行いたい。バンチングを発生する多重安定アレン・カーン型方程式に対し漸近展開から導出される界面の運動方程式は、有限時間で解が不連続になる衝撃波の方程式と同じ項を含むと考えられるので、集合論的アプローチの他この種の方程式を扱うことが出来る適正粘性解の理論によるアプローチも考察する。 綾織り模様の数理モデルはバンチングを含むため、垂直方向の特異拡散の手法と適正粘性解の研究を進める。まずはステップを含む結晶表面全体を定式化した改良モデルを導入し、その数値計算実験および数学解析を行う。この研究においては収集した資料の精査とその研究論文の著者との意見交換を行う。 中空孔の数理モデルの研究では、まずは考案したトイモデルに対する時間大域解の存在や連続性、正則性について研究し、不連続性が有限時間で発生するか否かを明らかにする。有限時間で不連続性が発生する場合には適正粘性解や集合論的アプローチを用いた解析も考察する。他方、現象を表す数理モデルの構成ではスパイラルの中心で発生している現象の数理モデル化や環境相での濃度場との連立方程式系を検討する必要がある。この点については結晶成長の研究者との意見交換を積極的に行っていく。 以上の研究分野については米、仏、伊国に研究者が多く、また国内にも関連する研究者が多いので、彼らとの意見交換を積極的に行うとともに有用な資料を多く収集したいと考えている。
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Research Products
(11 results)