2011 Fiscal Year Annual Research Report
材料物質内の結晶粒界を記述する数理モデルの解析と数学理論の新展開
Project/Area Number |
22740110
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
山崎 教昭 神奈川大学, 工学部, 准教授 (90333658)
|
Keywords | 関数方程式 / 実函教諭 / 力学系 / 最適制御 / 自由境界 |
Research Abstract |
本年度は、Kobayashi-Warren-Carter型の結晶粒界数理モデルにより生成された多価力学系に対するアトラクターの構造について考察した。まず、結晶粒界の角度速度のモビリティ項が未知関数に依存する場合を考察し、Kobayashi-Warren-Carter型の結晶粒界数理モデルの多価力学系に対するアトラクターはAllen-Cahn方程式のアトラクターと零関数との直積集合を含むことを示した。 結晶角度速度のモビリティ項が未知関数に依存する場合、結晶粒界モデルの解の時間大域的な挙動の解析(例えば、定常解に収束するまでの解析)は非常に困難であることがわかった。そこで、次に、モビリティ項が定数である場合を考察した。このとき、結晶粒界モデルの解は一意に存在し、結晶粒界の角度を表す関数は時間大域的に一様に零関数に収束することを示した。このことにより、モビリティ項が定数ならば、Kobayashi-Warren-Carter型の結晶粒界数理モデルにより生成された力学系は一価であり、それに対するアトラクターはAnen-Cahn方程式のアトラクターと零関数の直積集合と一致することが明らかになった。 また、Kobayashi-Warren-Carterが最初に提唱した数理モデル、つまり、平均結晶方位に関する方程式に線形拡散項がない数理モデルについて考察した。これまで考察してきた結晶粒界モデルでは、平均結晶方位に関し線形拡散効果を考慮:していた。そこで、その線形拡散の係数を0に収束させるという極限解析方法を用いることにより、平均結晶方位に関し線形拡散項がない空間1次元モデルの解の存在を示すことに成功した。Kobayashi-Warren-Carterが最初に提唱した数理モデル(平均結晶方位の方程式に線形拡散項がない結晶粒界モデル)の解の存在を示すことができた点は、本年度の極めて重要な成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶角度速度のモビリティ項が未知関数に依存する場合の考察が、当初の計画以上に難しいことが判明した。しかしながら、結晶角度速度のモビリティ項が定数であれば、結晶粒界数理モデルの解は一意であり、結晶粒界モデルのアトラクターはAllen-Cahn方程式のアトラクターにより特徴づけられることが明らかになった。これは、当初の計画では予想していなかった研究成果である。従って、総合的に考えると、交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度については、『(2)おおむね順調に進展している。』と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
結晶角度速度のモビリティ項が定数である場合、結晶粒界数理モデルのアトラクターはAnen-Cahn方程式のアトラクターにより特徴づけられることが明らかになった。しかしながら、従来の数理モデルでは、結晶角度速度のモビリティ項は未知関数に依存している。そこで、今年度の研究結果を受けて、今後の研究の推進方策として、未知関数に依存しているモビリティ項が時間無限大のときに定数になるという仮定のもとで結晶粒界数理モデルの漸近安定性とアトラクターの構造を考察することを考えている。また、結晶角度速度のモビリティ項が定数ならば結晶粒界数理モデルの解は一意であることが明らかになった。従って、結晶角度速度のモビリティ項が定数であるという仮定のもとで結晶粒界モデルの最適制御問題を考察することも今後の研究の推進方策の1つである。
|