Research Abstract |
通常,走化性系といえば走化性による移流を表す項を有する反応拡散移流系を指す.これまで,さまざまな走化性方程式が提案されてきたが,本研究では,そのうちでも三村昌泰教授・辻川亨教授によって提案された走化性・増殖系を扱った.この方程式は,増殖項がなければ,空間2次元の場合,走化性崩壊をもたらすKeller-Segel系と一致するが,ロジスティック型の増殖項があるおかげで,これが2次の減衰として作用し,爆発が抑えられて時間大域解の存在が示される.時間大域解の存在については,研究代表者を筆頭著者とした論文によって2002年に示されているが,本年度の研究では,減衰をα次とおいたときの時間大域存在について,何次まで減衰作用を弱めることができるのかについて考えた.手法として私たちが採用したエネルギー不等式を導く方法では,これを素直に適用するなら2002年の結果が限界であり,化学物質の生成項の次数を1より小さくしなければ,これを直接適用できないことが分かった.生成項の次数を1より小さくした方程式は,これまで提案されていなかったので,その部分も含めて新たな成果として,Nonlinear Anal.Ser.A : Theory Methodsに報告した.この研究は,東京医科歯科大学の中口悦史先生の研究協力の下で行った.走化性系における爆発と大域存在に関する臨界指数の研究については,放物型・楕円型走化性系を取り扱った研究がM.Winkler氏によってなされており,今回の成果をWinkler氏に知らせることで,彼の結果との比較やN次元への拡張などについて,研究協力を得ることができるようになった.これも次年度以降の研究につながる成果である. 蜂の巣構造のパターン解については,関西学院大学の奥田孝志氏と共同研究を行い,これが振動するパターンも発見したため,日本数学会等で報告した.
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