2011 Fiscal Year Annual Research Report
非線形結合振動子系の引き込み現象と時間遅れの影響に関する研究
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22740114
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
江上 親宏 沼津工業高等専門学校, 電子制御工学科, 講師 (90413781)
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Keywords | 結合振動子系 / 引き込み現象 / 時間遅れ / 数理生物学 / 周期解 / Hopf分岐 / 写像度 |
Research Abstract |
本研究では、結合したリミットサイクル振動子系の引き込み現象と時間遅れ導入に関する影響の解析に向けて、写像度理論を用いた新しい手法の確立を目的とする。当該研究では、主にBelousov-Zhabotinsky(BZ)反応系とvan der Pol型方程式系を解析の対象としており、安定周期解の存在問題に対して単に数学的証明を与えるだけでなく、解析結果を実証するための実験系構築を研究工程に組み入れて科学的研究としての完成度を高めることを目標としている点が、従来の数学研究と比べて新規性を持っている。今年後は、とりわけ基本実験系構築において進展があった。 1.二種類の触媒(セリウムとフェロイン)が作用するBZ反応において反応溶液が4色5段階に変化するリズム現象に対して理論的な証明を与えるために、反応速度論に基づいて新しい数理モデルを構築しLiuによるHopf分岐定理を用いて証明した。本研究成果については、招待講演にて発表した。 2.2つのBZ反応系の相互同期現象を実験的に観測するために、カップリングの強さを調節できるアクリル製反応槽を設計・製作し、これを用いてORPの時間変化を計測した。溶液の種類、濃度、カップリング強度を変えながら計測した結果、一定の条件下で、数理モデルの解析結果に対応する実測データが得られた。 3.オペアンプを用いてvan der Pol型振動回路を製作し、これを適当なカップリング抵抗で結合させLimit cycleを観測する実験に成功した。次段階として、電気回路での時間遅れを実現するためにFPGAまたはSHマイコンを用いたシステムの試作に入った。 4.上記以外にも、関連する数理生物モデルの研究成果について、数件の学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論解析の面では、当初立てた研究方針に沿って順調に計算が進んでいる。一方、数値シミュレーションにより、van der Pol型の結合振動子系において、ある一定の条件下でLimit cycleが複数存在する場合が見つかった。これにより新たな研究テーマの端緒を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで理論的計算と基本実験系構築を中心に研究を進めてきたが、今後、結合振動子系の解析結果を実験によって実証するために、特に時間遅れを実現するためのアイデアを盛り込んだ実験環境の構築を目指す。また、当該研究の最終年度を迎えるため、研究成果をまとめる論文執筆に一層注力する。
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