2010 Fiscal Year Annual Research Report
太陽大気の弱電離プラズマにおける磁気エネルギー散逸メカニズムの研究
Project/Area Number |
22740121
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯部 洋明 京都大学, 宇宙総合学研究ユニット, 特定講師 (90511254)
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Keywords | 磁気リコネクション / 弱電離プラズマ / 太陽彩層 / 磁気流体力学 / 数値シミュレーション / プロミネンス |
Research Abstract |
天体プラズマにおける磁気エネルギー散逸において、もっとも重要なメカニズムが磁気リコネクションであるが、太陽下層大気や原始惑星系円盤のような電離度の低い(弱電離)プラズマにおける磁気リコネクションに関する研究はこれまであまりなされていない。磁気リコネクションにおける弱電離の影響を調べるため、中性粒子との衝突に起因する「両極性拡散」の効果を取り入れた磁気流体数値シミュレーションコードを開発し、磁気リコネクションの2次元数値シミュレーションを行った。その結果、まず両極性拡散により電流シートが薄くなり、薄くなった電流シートで通常の電気抵抗による抵抗性テアリング不安定が起こること、テアリング不安定によって発生した磁気島が電流シートから噴出することで、速い磁気リコネクションが間欠的に起こることを示した。また、電離度や縦磁場(電流方向の磁場)が非一様な状態では、電流シートが薄くなる効果が局在化し、これがリコネクションの形状と速さに大きく影響を与えることを発見した。これは太陽黒点の半暗部や、プロミネンス中での磁気リコネクションにおいて特に重要となると考えられるため、この効果を詳細に調べることは次年度以降の重要な課題である。また、「ひので」衛星の可視光望遠鏡のデータ解析から、彩層で発見された磁気リコネクションに伴うジェット現象が非常に簡潔的であり、上述の数値シミュレーションで得られた描像と定性的にあっていることや、同じく弱電離プラズマである太陽プロミネンス中でも、速い磁気リコネクションに伴うプラズマ噴出が起きていることを明らかにした。これらの研究結果は、太陽の下層大気での様々な現象を理解すると共に、恒星・惑星大気、分子雲、原始惑星系円盤など、宇宙で普遍的に見られる弱電離プラズマのダイナミクスを理解することにつながる。
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