2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22740132
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
川原田 円 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (50462677)
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Keywords | X線天文学 / 宇宙物理 |
Research Abstract |
本年度は、A1914とA1750という、衝突銀河団について、すざく衛星による観測を行った。これまでに、比較的に緩和した系である銀河団A1689について、周辺の大規模構造から物質が流入し、銀河団内部に向かってエネルギー輸送が行われていることがわかってきたが(Kawaharda et al.2010)、銀河団の形成現場である衝突銀河団におけるエネルギー輸送については、まだ観測的に明らかになっていない。周辺をとりまく大規模構造からのエネルギー流入、および、衝突した銀河団同士におけるエネルギー輸送を解明すべく、現在これら2天体について、データの解析を行っている。 「すざく」によるデータ解析と並行して、次期X線衛星ASTRO-Hの開発にも携わっている。この衛星は、軟X線領域におけるかつてない精密な分光と、軟ガンマ線領域にまで届く、広帯域な高感度観測を実現する。ASTRO-Hを使えば、「すざく」で切り拓いた銀河団プラズマにおける熱輸送の研究を、プラズマの運動、プラズマの加熱、粒子加速を直接計測することで、飛躍的に発展させることができる。本年度に私は、ASTRO-H衛星に搭載される硬X線検出器(HXI)によって、衝突銀河団A3667の広がった電波が観測されている領域を観測したときに、硬X線領域で撮像分光ができることを確かめた(Kawaharada et al.2012年春の天文学会)。この観測が実現されれば、銀河団衝突によって解放されて、プラズマに輸送されたエネルギーが、どのような物理過程をへて、どの程度プラズマの加熱や粒子加速にまわるか、観測データから推定することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A1689におけて発見された、宇宙の大規模構造から銀河団へのエネルギー輸送の証拠は、SDSSの光学データや、すばる望遠鏡の重力レンズ観測と組み合わせることで、大変重要な成果であり、各種の新聞や雑誌に掲載されるなど、社会的な反響も大きかった。他方で、A1914やA1750といった、衝突銀河団についての研究は、すざく衛星による観測の遅れなどもあって、当初の計画から若干遅れている。これらを全体的にみると、おおむね順調に進展していると言ってよいであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、A1914とA1750のデータ解析を行い、成果をまとめて投稿論文にする。また、引き続きASTRO-H衛星HXIの検出器開発を続けるとともに、HXIによる銀河団の硬X線領域でのマッピング観測と、重力レンズ観測を組み合わせた、プラズマ加熱と粒子加速によるエネルギー輸送の研究の可能性を検討し、衛星の観測計画に反映していきたい。
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Research Products
(8 results)