2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740140
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小池 正史 埼玉大学, 理工学研究科, 非常勤講師 (10447279)
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Keywords | ビッグバン元素合成 / 始原リチウム7欠損問題 / 超対称模型 / レプトンフレーバーの破れ |
Research Abstract |
本研究で考察する元素合成のシナリオにおいては、現在の始原リチウム7の欠損を説明するため、宇宙初期未知の負荷電粒子が存在して、合成された始原リチウムと相互作用してこれらを壊すと考える。加えて、この反応で同時に副産物として安定な未知粒子が生じ、これが暗黒物質の正体であると考えるものである。このシナリオでは、未知の負荷電粒子(具体的には超対称模型でスタウを考える)が宇宙初期にどれだけあるか、なるべく正確に見積もることが、現在残存する始原リチウム7の定量的に評価する鍵になる。従前の研究ではスタウの存在量は自由パラメータと考えて観測による制限と合致する範囲を考察してきた。 本年度はこのような考察を一歩進め、初期宇宙において超対称性模型での負荷電スタウの存在量を実際に評価した。そのため、私は元素合成時期以前の宇宙の熱史に着目し、この時期におけるスタウの存在量の変化をボルツマン方程式によって追跡した。こうして得られた初期宇宙におけるスタウの存在量を、これまでの研究で得てきた宇宙観測からくる制限と突き合わせて検討した。その結果、リチウム存在比の欠損と暗黒物質の存在量を同時に説明できる可能性があることを示した。 今後の新たな展開を見据えた研究発表も行った。レプトンフレーバーの破れ(LFV)があれば本研究のシナリオにさらなる変更が加わる可能性がある。超対称な模型ではLFVは自然に入りうるため、本シナリオの可能性をいっそう広げる可能性がある。さらにくLFVの実験探索は、近い将来に大きな進展が期待できる点でも時宜を得た着想であると考えられる。そこで、この展開を見据えてLFVの実験探索の新たな可能性についても考察し、発表した。
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