2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740158
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
酒井 忠勝 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50375359)
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Keywords | ゲージ理論 / 弦理論 / 双対性 / ハドロン |
Research Abstract |
今年度は弦理論を用いて、量子色力学(QCD)の非摂動効果、特に高いスピンをもつ中間子の質量スペクトラムを計算した。その際用いたモデルは、本研究代表者が2004年に共同研究者と共に提唱したものであり、低エネルギーのハドロン物理を定量的にうまく記述できることが知られている。ゲージ理論の強結合領域の物理が、弦理論により簡単に調べられるとはまったく驚くべきことであり、このモデルの有効性をさらに確かめることは非常に意義のある研究である。このような動機のもと、高いスピンをもつ励起された中間子の質量スペクトラムを弦理論から解析し、実験結果との比較を試みたのが本研究の目的であった。そのために必要な技術上の問題として、曲がった空間、しかもある特殊な磁束が加えられた背景場中の弦理論をいかに量子化するか、が挙げられる。この問題は現在も世界中の研究者により取り上げられている難問であるが、本研究ではある種の近似法を開発することで、質量の計算が可能となった。具体的には、(1)曲がった空間をある極限のもとで平坦な時空に近似し、(2)その平坦時空上の弦理論の厳密解を求め、(3)最後にこの厳密解に曲がった時空の効果を摂動的にとりいれる、のステップで計算を実行した。これはあくまで近似計算ではあるが、それにも関わらず得られた結果を実験結果と比べてみると、うまい一致が見られた。これは我々が提案したモデルの有効性を支持する結果であり、興味深い。 今後はこれらの研究成果をさらに精密化するため、曲がった時空上の弦理論や、ゲージ理論の非摂動効果に関する研究をさらに押し進めることが重要な課題となる。
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Research Products
(1 results)