2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740165
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 哲 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (90570672)
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Keywords | 弦理論 / 超対称性 / BPS状態 / トポロジー的弦理論 |
Research Abstract |
弦理論をコンパクト化した理論において、その理論にある粒子のスペクトルを求める問題は、基本的で重要な問題である。特に4次元でN=2の超対称性を持つようにコンパクト化した理論でのBPS状態のスペクトルは、超対称性を用いたアプローチが可能であり、解ける可能性のある問題である。従来このようなコンパクト化において主にD6-D2-DOブレーンの結合状態を数える問題が多く研究されており、興味深い数学的構造を持っている。特に理論のパラメータを変えることによるBPS状態の数の変化は「壁越え現象」と呼ばれ、詳しく研究されてきた。 これに対して我々はconifoldと呼ばれるCalabi-Yau多様体でコンパクト化した場合のD4-D2-D0ブレーンの系を考察した。この系ではパラメータを変化させていくことで「フロップ」と呼ばれるトポロジーの変化が起こることが知られており、このような変化も含めてBPS状態の数がどう変化するかを調べた。この系で我々はBPS状態の変化する「限界安定の壁」の位置を完全に明らかにした。さらに、これまで知られていなかった弦の効果が大きい部分も含め、すべてのパラメータ領域でBPS状態の分配関数を計算することに成功した。我々の結果はこれまで知られていたパラメータ領域での結果と無矛盾であり、これは我々のやり方が正しかったことを示している。 さらにここで得た状態数を再現するような簡単な統計モデルを発見した。このモデルは箙量子力学から導かれる。このモデルと元のD4-D2-D0ブレーン系との関係は目下考察中である。
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