2011 Fiscal Year Annual Research Report
GeVガンマ線全天サーベイによる超新星残骸における宇宙線加速の系統的研究
Project/Area Number |
22740167
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
片桐 秀明 茨城大学, 理学部, 准教授 (50402764)
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Keywords | 宇宙線 / Gevガンマ線 / 超新星残骸 / フェルミ衛星 |
Research Abstract |
フェルミ衛星は、GeV領域の宇宙ガンマ線に対して過去最高感度、角度分解能を誇る望遠鏡である。ガンマ線は、高エネルギーの原子核である宇宙線が星間物質と相互作用することによって放射されるため、宇宙線を研究する上で強力な手段となっている。フェルミ衛星は、2008年6月に打ち上げられて以来、1年間の観測によって、数個の超新星残骸(SNR)が宇宙線陽子の加速源であることを示唆する観測結果を出してきた。これらの天体の多くは分子雲と相関し、年齢が比較的古い。この事実は、宇宙線加速を行うSNRの共通する特徴を捉えている可能性がある。しかし、ガンマ線放射効率は分子雲の質量に比例するため、明るい天体のみでは観測的なバイアスがかかる。本研究はフェルミ衛星によるガンマ線測定を比較的暗めのSNRまで拡張し、SNRの年齢および分子雲の質量に対してSNRが加速した宇宙線総エネルギーとの相関を求めることが大目的である。平成23年度は、(1)平成22年度に解析を進めた、G8,7-0.1とCygnus Loopの議論をそれぞれ論文にまとめ投稿し、受理された。これらは、フェルミ衛星1年目カタログでSNRに空間相関が認められた比較的明るめの天体のうち、詳細解析が進んでおらずかつガンマ線で広がっていて空間分布の相関を調べやすい天体である。分子雲との相関を調べた結果、G8.7-0.1は、これまでの中年SNRの観測と同じく分子雲との相関が確認された一方、Cygnus Loopは分子雲とガンマ線の相関していないという特異な性質が見つかった。(2)ガンマ線で明るいSNRW44の詳細な空間分布を調べ、論文として投稿した。W44は、ガンマ線で明るいSNRであるが、2年強のデータを蓄積した結果、SNRの外側まで広がったガンマ線構造が見つかった。これは、宇宙線が加速領域から逃げ出して拡散し、近傍の分子雲と反応して生じたものと考えられる。解析はSLACの内山氏ほかが中心となって行ったが、議論に参加し論文として仕上げた(掲載決定済み;発行年は2012年4,月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェルミ・ガンマ線衛星の1年目カタログでSNRに空間相関が認められた天体のうち、詳細解析が進んでいない天体について解析を進め、3本の査読付き論文としてまとめることができた(1本は2012年4月掲載予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、比較的暗めの超新星残骸(SNR)の天体について「広く浅く見る」、つまり10数個を研究していくことを目指していたが、分子雲のデータは様々な速度帯のデータの重ね合わせで構成されており、その中から超新星残骸に対応するデータを選別するのは難しく、自動化されたプロセスに頼ると誤差が非常に大きく粗い議論しかできず、論文としてのクオリティが下がる、あるいは論文化が難しいことが分かってきた。そこで最終年度は、SNRの個数をある程度選別し、そのSNRのデータを詳細に深く見るという、科学的な成果が最大限得られる見込みのある方針で研究を進める予定である。
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