2011 Fiscal Year Annual Research Report
ウィルソンクォークを用いた現実クォーク質量でのQCD熱力学の研究
Project/Area Number |
22740168
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梅田 貴士 広島大学, 大学院・教育学研究科, 講師 (40451679)
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Keywords | 格子QCD / クォークグルーオンプラズマ / 状態方程式 |
Research Abstract |
この研究では,本研究代表者が中心となって開発した固定格子間隔アプローチにおける温度積分法を用いて,高温・高密度のQCDで現れるクォーク・グルーオン・プラズマ状態の性質を格子QCDによって計算する。世界的に多く採用されている格子定式化のKSクォークよりも理論的な正当性が確保されたウィルソンクォークを用いて,QCDの熱力学量,特に状態方程式の計算を世界で初めて現実クォーク質量において行う事を目的とする。 本年度は2+1フレーバーQCDの試験的計算を進めた。 我々の提唱した温度積分法を用いると,トレースアノマリーの期待値の温度積分によって様々な状態方程式が計算できる。このトレースアノマリーの赤外発散の繰り込みはCP-PACS/JLQCDグループのゼロ温度ゲージ配位を利用する。各温度(とゼロ温度)でのトレースアノマリーの計算には格子作用の値が必要になる。クォーク部分については(Z2)ノイズ法を用いてKEKにおける大型シミュレーションプロジェクトとして計算した。特にベータ関数の計算の改良と系統誤差の見積もりを行うことで,より定量的に結果の検討を行うことが出来た。さらに繰り込まれたポリヤコフループとその揺らぎ量を計算することによって相転移温度の見積もりも行った。ポリヤコフループの繰り込みは既に確立された手法であるが,固定格子間隔アプローチで2+1フレーバーの計算としては初めての物である。これらの結果は論文にまとめ現在学術雑誌に投稿中である。 さらに,現実クォーク質量でのシミュレーションへ向けて,共通コードプロジェクトで開発された配位生成プログラムを採用し,スメアリングを取り入れた配位生成のテストを開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた2+1フレーバーQCDの試験的計算を終えて論文を学術雑誌に投稿できた。現実クォーク質量へ向けた,別の物理スケールでのテスト計算が遅れているので次年度で進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現実クォーク質量での配位生成を行うための共通コードのテストを進めると共に,新しいベータ関数の計算方法のテスト,異なる物理スケールでのテスト計算を進めていく予定である。
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Research Products
(5 results)