2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740169
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
緒方 一介 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (50346764)
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Keywords | 3粒子融合反応 / Ternary Fusion Process / 宇宙元素合成 / triple alpha / CDCC |
Research Abstract |
まず、3粒子融合反応の反応確率の定式化を整理し、平明な理解を与えた。これにより、3粒子融合反応と、その逆過程である、光を用いた3粒子分解反応との関係を正確に議論できる足場が完成した。その上で、3粒子系の反応を正確に解く手法として名高い、ファデーエフの方法を用いた計算結果との比較を行った。この計算は、法政大学の石川壮一氏によるものであり、研究代表者の研究成果と著しく異なる結果を与えることが2010年7月の国際会議において報告された。研究代表者は、石川氏の計算を分析することにより、本研究の本質である、「3粒子系の量子力学的相関に伴うクーロン相互作用の変化」が、氏の計算では事実上取り入れられていないことを明らかにした。 次に、本研究の反応計算の中身を詳細に分析する事により、1)チャネル結合計算を無視した場合、反応率が収束しないこと、2)α粒子間の軌道角運動量が2の成分は、反応率に影響を与えないこと、3)閉じたチャネルの影響は、恒星進化にとって本質的に重要な温度領域(7×10_7K以上)では、α粒子間の相互作用に繰り込めること、を明らかにした。 その一方で、天体物理学の専門家ともメールや国際研究会で議論を活発に行い、彼らが使用している既存の反応率が物理的根拠を持たないことを伝えた。本研究が提示した新しい反応率は、中性子星のX線バーストやセファイド型変光星の分析に応用され、前者では観測との矛盾が、後者では観測と理論との矛盾の部分的解決が、それぞれ示された。
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