2011 Fiscal Year Annual Research Report
電気双極子モーメントの原子核構造理論からのアプローチ
Project/Area Number |
22740171
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
東山 幸司 千葉工業大学, 工学部, 助教 (60433679)
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Keywords | 原子核構造 / 殻模型 / 核子対殻模型 / 生成座標法 / 中重核 / 電気双極子モーメント / シッフモーメント |
Research Abstract |
本研究の成果は,質量数130領域の原子核に対して,パリティと時間反転対称性(PT)を破る相互作用により生じるシッフモーメントを計算すると共に,129Xe原子の電気双極子モーメントを評価したことである。中重核に対するシッフモーメントの理論研究は平均場模型による計算しか行われていなかったが,本研究により初めて平均場を超えた枠組みによる数値解析に成功した。また,これまでの研究において,核子固有の電気双極子モーメントにより生じるシッフモーメントを計算しており,2つの効果を評価できるようになった。本研究の結果により,核子固有の電気双極子モーメントにより生じるシッフモーメントは中性子の波動関数の寄与が陽子のものよりも大きくなること,PTを破る相互作用により生じるシッフモーメントは特定のエネルギーレベルの寄与が重要であることが明らかになった。 また本研究では,殻模型により質量数210領域(アクチナイド領域)の偶偶核・奇核について殻模型により精密計算を行い,原子核の励起メカニズムを明らかにした。この領域の核子間にはたらく相互作用の研究は現在まであまり行われてこなかったため,本研究では現象論的な有効相互作用を用いて数値解析を実行し,幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現した。殻模型による結果を核子対殻模型により解析したところ,質量数210領域に現れる偶偶核の低エネルギー状態は主に集団運動核子対で作られており,高スピン状態は1g9/2軌道にある陽子2個の整列の寄与が大きいことを確認した。 さらにその他の成果として,質量数80領域の偶偶核に対して生成座標法による数値解析や,130Te原子核のニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では平成23年度において,質量数200領域の原子核構造の解明する計圏であったが,現段階ではまた数値解析を終えておらず,予定よりも遅れている。その一方で,平成24年度以降に行う予定であった原子核の電気双極子モーメントを計算する枠組みは整えられている。質量数200領域の数値解析が終われば,直ちに電気双極子モーメントの評価を行うことができるようになっており,研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では本年度において,質量数200領域の原子核構造の解明を目指す。この領域の原子核を計算するための計算コードの改良は行っており,質量数200領域の有効相互作用を決定する段階である。偶偶核・奇核・奇奇核のエネルギー準位・電磁遷移の実験値を同時に再現するように相互作用を決定し,核子対殻模型の波動関数を詳細に解析することで原子核構造を明らかにする。さらに,パリティと時間反転対称性を破る相互作用により生じるシッフモーメントと核子固有の電気双極子モーメントにより生じるシップモーメントの評価を行う計画である。
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