2010 Fiscal Year Annual Research Report
有限エネルギー和則を用いたハドロン前方散乱振幅の決定
Project/Area Number |
22740175
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
石田 宗之 明星大学, 理工学部, 准教授 (80366913)
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Keywords | 散乱全断面積 / 高エネルギーハドロン散乱 / 有限エネルギー和則 / TOTEM |
Research Abstract |
高エネメギーハドロンの前方散乱振幅の普遍性を検証するために、pp, pbarp、πp、Kp前方散乱振幅の解析を行った。研究計画の1年目の方法に記載した通り、低エネルギー領域のデータについてさらに詳細に検討し、有限エネルギー和則の双対性を用いて高エネルギーデータの解析をするための方法を考案した。具体的には、連続モーメント和則(CMSR)を用いて、これまでの解析を拡張して、低エネルギーの情報をフルに高エネルギー領域の解析に生かす方法を考案した。これまで全断面積のデータについては双対性を用いてかなりの情報を取り込んできたが、CMSRを用いれば今まで全く捨てていた低エネルギー領域の実部(ρ-ratio)のデータを解析に取り込むことができ、Bパラメタ決定の精度がかなりあがると期待できる。具体的な解析は次年度になるが、そのための基本的な枠組みをえた。πpの公式は完成し、解析を待つばかりの段階に来ている。一方これまでの解析の成果を夏の京都の国際会議HESI2010で発表した。エネルギー10GeV以下の領域のデータを有限エネルギー和則を用いて取り込む解析を行った結果、πp散乱のBパラメタの値に劇的な改善が見られた。Kpも5GeV以上のデータまでしか取り込めていないが、それでも誤差は半分に激減することがわかった。普遍性を実験的に検証できるのは我々の方法以外にないことが明らかになったと思う。研究年度外になるが4月に発表されたLHC、Atlasのpp非弾性散乱断面積の測定値はこれまで矛盾のあったTevatronのCDFデータ点とDOデータ点の中間を高エネルギーに延長したところにあり、これは全断面積の実験データではないが、我々の予言と同じ傾向を示している。間接的ながら我々の解析の正しさを示しており次年度に予定されるTOTEMによる全断面積の実験結果を期待させるものとなった。
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