2011 Fiscal Year Annual Research Report
有限エネルギー和則を用いたハドロン前方散乱振幅の決定
Project/Area Number |
22740175
|
Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
石田 宗之 明星大学, 理工学部, 准教授 (80366913)
|
Keywords | 前方散乱 / 散乱全断面積 / Kp散乱 / 高エネルギー散乱 |
Research Abstract |
高エネルギー散乱全断面積の上昇の普遍性を検証するためにKp散乱の解析を行った。普遍性を確認するためにこれまで、pp、πp、Kp散乱の解析を行い、pp、πp散乱については限界までデータを活用してきた。一方Kp散乱はデータの活用が十分とはいえず、解析結果の誤差も他の2過程に比べて圧倒的に大きかった。普遍性を検証するには、Kp散乱での上昇の係数(Bパラメタ)の値がpp、πp散乱のBパラメタの値と一致するかどうか検証する必要があった。 解析には有限エネルギー和則が有効であるが、Kp散乱にP'型の和則を適用しようとすると、K-p過程が発熱反応であり、閾値以下のエネルギーにΛπのOpen channelがあり、この領域に「見えない共鳴状態Λ(1405)」が存在し、これが大きな効果をもっていることが次第にわかってきた。Λ(1405)の寄与を正確に評価するにはKp散乱のデータのみでは不可能でΣπ、Λπなど、他のプロセスのデータを総合的に解析する必要があり、現状では解析は不可能に思われた。 ところがそうした解析がMartinによって既になされていることが明らかになった。彼の論文に記載されているKp,Λπ、Σπの3チャネルのK行列の数値を用いると、Kp前方散乱振幅の閾値以下の値を正確に決定することができ、和則に用いる積分値を正確に評価することができた。この結果を拘束条件としてではなく、誤差つきのデータポイントとして用いる手法を新しく採用し、Kp前方散乱の再解析を行った。解析の精度は飛躍的に向上し、Bパラメタの値を決定することができた。この結果pp、πp、Kp3つのプロセスでのBパラメタの普遍性は1σの精度で確認された。高エネルギー前方散乱の普遍性を何等の仮定も用いずに検証した決定的業績だと言えると思う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Kp散乱の全断面積の解析の精度を一昨年度の水準以上に向上させることは、当初大変困難であった。この問題の権威であるUniversity of WisconsinのVbrnon Barger教授の協力を得て、計画は国際共同研究に発展した。UWの多くの教授陣と活発に議論する機会を得た。特にOlsson名誉教授の示唆で、有効な文献を入手でき、予定していたKp散乱解析の精度の向上に成功した。結果は高エネルギー散乱全断面積の上昇の普遍性を強く支持するものとなった。これは当初の予測通りの結果であり、来年度の研究の完成に向けて、大きな前進となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
Kp散乱解析で得られた知見をpp散乱に適用し、LHC TOTEMでの散乱断面積の実験結果も用いて、全断面積上昇の普遍係数(Bパラメタ)の値を正確に決定する。またSubleadingの寄与であるReggeonの寄与をfactorizationの議論を使って、あらゆるハドロン散乱に適用できるように拡張する。特にππ散乱の解析に適用してみる。UWの教授陣との活発な交流を続ける。
|