2011 Fiscal Year Annual Research Report
流体・重力双対性を用いたブラックホールダイナミクスの研究
Project/Area Number |
22740176
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
宮本 雲平 立教大学, 理学部, 研究員 (70386621)
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Keywords | 流体・重力対応 / ブラックホール / 一般相対論 / 流体力学 |
Research Abstract |
一般相対論では定常ブラックホールが熱力学系として扱えることが知られており、ブラックホール熱力学として定式化されている。この対応は応用上も非常に重要であるが、動的ブラックホールに関して同様の対応は知られておらず、長年未解決問題として君臨してきた。この問いに答えるのがブラックホールと流体の対応を定式化した流体・重力対応であり、ブラックホール熱力学をブラックホール流体力学へと一般化したものと見なせる。 弦理論をはじめとする統一理論・量子重力理論の候補は高次元時空で定式化されており、理論の非摂動的側面や初期宇宙の理解には高次元ブラックホールの考察が不可欠になる。本研究の目的は、流体・重力対応という強力な道具を携えて高次元ブラックホール研究における諸問題、特に高次元ブラックホールの不安定性やダイナミクスなど、を解明することである。 本年度は、高次元ブラックホールに特徴的な不安定性とそれに伴うダイナミクスについて知る為、双対な流体である表面張力で支えられた液柱の不安定性について考察した。上記の枠組みで考察するには、表面張力で支えられた圧縮性流体の性質を知る必要がある。勿論、類似した研究は長い歴史を持つが、表面張力と圧縮率を同時に考慮した本格的考察は本研究で初めて行われた。結果として、ある臨界半径より小さい液滴・液柱が不安定であるという驚くべき結果を得た。この結果は、純粋な流体力学的立場からも十分に興味深いが、重力の言葉に翻訳した際、小さいブラックホールの未知の不安定性を意味するか近日中に結論付けられると考えている。ブラックホール研究の過程で、流体分野において長く見落とされてきた系(圧縮する液滴・液柱)の重要性が再発見されたことは非常に興味深い。また、本成果は今後の流体・重力対応を用いたブラックホール研究へ一つの重要なステップになることは間違いない。
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