2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740191
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
泉田 渉 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20372287)
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Keywords | メゾスコピック系 / ナノチューブ / スピン |
Research Abstract |
ナノチューブを舞台として、電子がどのようなスピン状態をとるのか、様々な相互作用を通じてスピンがどのように運動し緩和するのか、それが伝導特性にどう現れるのか、さらにどのようにスピンを制御できるのか、といった問題を理論的に明らかにすることが本研究の目的である。本年度は主に、カーボンナノチューブおよび関連物質における電子状態、スピン状態、緩和の要因となる振動モードについて、昨年度に昨年度に引き続き研究を行った。 カーボンナノチューブにおいて、ナノチューブ表面の曲率によりエネルギーバンドが傾斜する効果を指摘した。金属エネルギーバンドの傾斜は、直径の小さい、またアームチェア螺旋度に近いチューブに対して大きく現れること、フェルミエネルギーから1電子ボルト程度のエネルギー領域において見られることなどを、強束縛模型による数値計算により示した。さらに有効質量近似に基づき有効モデルを構築した。バンド傾斜は左右進行波の速度の違いとして現れる。またナノチューブ量子ドットにおいてバンド傾斜はノギス様のエネルギー準位構造として現れることを指摘し、これにより2重もしくは4重縮退の振舞いはエネルギーにより移り変わることを指摘した。 半導体量子ドットにおいて、スピン状態によって様々なスピンブロッケード現象が現れることを示し、スピン緩和の測定の際の指針を与えた。 半導体ナノスクロール構造に対して、低エネルギーの振動モードの解析を行った。振動モードは、軸方向の振動の有無に対応し、2種類の異なる関数でスケールされることを見いだした。また軸方向の振動モードは電子系と強く結合する。このようなモードは電子系のコヒーレンスにも影響を与えると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノチューブの曲率による電子状態への微細構造が明らかとなった。これは低エネルギーにおけるナノチューブ中のスピン状態を考える上で重要な効果である。層また、ロール構造に対して曲率が振動モードを大きく変化すること、および、電子系と強く結合するモードの存在を明らかにした。強く結合するモードはスピンのコヒーレンスにも影響を与えるため、本研究の推進に重要な指針を与えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、ナノチューブ表面の曲率が、エネルギーギャップ、スピン軌道相互作用、バンド傾斜などを通じて、低エネルギーの電子状態に対して重要な影響をもたらすことを示してきた。今後は、曲率の効果に加え、端散乱によるスピン散乱や定在波のスピン状態など有限長の効果、電子の非対称速度が電荷やスピン伝導にどのように現れるのか、また、スピン状態がスピン軌道相互作用、核スピンとの相互作用、電子間相互作用、電子格子相互作用などを受ける結果どのような散乱を受けるのか、といった解析をすすめる。
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Research Products
(13 results)